ゴーン事件の見立てだけでなく、FacebookのLibraに対する各国の反応や、G20福岡会合での合意が暗号資産規制に与える影響など、かなりタイムリーな話題も織り交ぜており、活字の書籍と思えないライブ感に驚かされた。 最終章では暗号資産の未来について触れられ、投機の対象だったビットコインをはじめとした初期の暗号資産「仮想通貨1.0」に対して、今後は主権国家の中央銀行が発行する「仮想通貨2.0」「ソブリン・クリプト・カレンシー」が市場を支配すると説く。その前哨戦としてLibraに対する規制当局の姿勢を位置づけようとしているようだ。 国家権力と通貨の関係を改めて指摘した上で、米国と対峙するロシアのブロックチェーン技術に着目したところは慧眼だが、各国の中央銀行が未来の電子マネーの担い手になるかというと、わたし自身は懐疑的である。スウェーデンのように人口が少ない国はともかく米国、ロシア、中国、日本