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書籍と朝日新聞に関するtxmx5のブックマーク (53)

  • ニュースの本棚 - コラム別に読む - 書評・コラムを読む - BOOK asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ニュースの棚 毎週日曜日の読書面に連載中。「原発事故」「地方自治」「ねじれ国会」など、時事的なテーマを理解するためのオススメ3冊を、各分野の専門家がご紹介しています。 吉田秀和の遺産 片山杜秀さんが選ぶ音楽は自立した精神の支え 昭和初期の日比谷公会堂。吉田秀和は「さる外国のピアニスト」のリサイタルでバッハとシューマンを並べて聴く。初の評論集『主題と変奏』の巻頭に置かれた「ロベルト・シューマン………[もっと読む] [文]片山杜秀(慶応大学准教授・評論家) [掲載]2012年06月03日 ベーシックインカム 山森亮さんが選ぶ ■全ての人に無条件で所得を ベーシックインカム(以下BI)とは、全ての人は生活に足る所得への権利を無条件で持つ、という考え方である。生存権の純粋な形での表現といっても良い。18世紀末に出現した(………[もっと読む] [文]山森亮(同志社大学教授・社会政策) [

  • 「民俗と民藝」書評 「暮らしの真実」透視した2人|好書好日

    民俗と民藝 [著]前田英樹 学術用語の初期の翻訳例に、今は「真理」「真実」と訳されるtruthの訳語として「真(ホンマ)」というのがあった。嘘(うそ)みたいな話だが、ホンマのこと。ものごとを貫く「まこと」の道理を、(関西の)生活のなかに染みわたった語で訳そうとしたのである。 著者によれば、柳田國男の民俗学と柳宗悦の民藝(みんげい)運動という、ほぼ同時期に展開された知の二つの動きも、まさに人びとが無名のままで培った「民俗」と「民藝」のなかに「暮らしの真実」を透視しようとするものであった。 ところがこの二つの動き、呼応しあう「民俗」と「民藝」という概念を軸としながら、そして事件の継起として語りだされる歴史学のなかで人びとの暮らしの連続が「無歴史」とされることに強く抗(あらが)いながら、さらに後年、これまたともに沖縄に深く思いを寄せながら、なぜか論争も参照も協力もした跡がない。たった一度きりの

    「民俗と民藝」書評 「暮らしの真実」透視した2人|好書好日
  • 「難病カルテ―患者たちのいま」書評 当事者の人生、丹念に聞き出す|好書好日

    難病カルテ―患者たちのいま [著]蒔田備憲 ある日。毎日新聞佐賀県版で連載されていた記事が目に留まった。内容に圧倒され、既に掲載されていた数十回分を一気読みした。 連載名は「難病カルテ」。著者の蒔田は、多くの難病当事者に会い、生活を描写し続けてきた。感動的な闘病記でもなく、告発的なルポルタージュでもない。当事者の「顔」を、抑制された筆致で伝え続けた。当事者らを他者化せず、隣人として想像して欲しいという願いが伝わってくる。 難病は、現代の医学では治療が困難な病気の総称だ。原因が不明で、治療法が確立されておらず、経過は慢性的。身体的にのみならず、精神的にも経済的にも負担が大きい。医療費だけでなく介助も必要となる。制度も複雑。手続きは煩雑。理解は不足。「困ること」づくしだ。 患者の人数は、定義次第で変わる。医療費の一部助成がなされる難病は56疾患(約81万人)だが、指定されていない病気も多く、広

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  • 福嶋亮大「復興文化論」書評 柿本人麻呂から宮崎駿まで|好書好日

    ISBN: 9784791767335 発売⽇: 2013/10/22 サイズ: 20cm/413,7p 復興文化論―日的創造の系譜 [著]福嶋亮大 柿人麻呂から『平家物語』『太平記』『椿説弓張月』、三島由紀夫、太宰治、村上春樹、手塚治虫、宮崎駿まで盛りだくさんの文化論である。壬申の乱から源平合戦、応仁の乱、日露戦争、第二次大戦など数々の戦乱に震災、中国の動乱の影響など、日社会は「慢性的負傷」状態にあり、「復興期においてたびたびイノベーションを引き起こしてきた歴史それ自体が、日文化活動の一段深いところにある動力」だとする。 戦争や災害とその復興という軸で日を捉えると、確かに新しい側面が見えてくる。そのナショナリズムは「日ならざる何か」への「モラルも目的もない変身願望」であり、愛国に見えるものを天皇への恋情としたところも斬新だ。そのような個々の論が復興といかなる因果関係があるか

    福嶋亮大「復興文化論」書評 柿本人麻呂から宮崎駿まで|好書好日
  • 「あかんやつら―東映京都撮影所血風録」書評 底抜けに痛快、豪傑映画人たち|好書好日

    あかんやつら―東映京都撮影所血風録 [著]春日太一 血風録という芝居がかった副題と、表紙の写真に使われた犬吠埼の派手に砕け散る白波が内容をよく表している。書は65年に及ぶ太秦の東映京都撮影所の歴史を綴(つづ)ったものだが、著者の狙い通り、水滸伝さながらに豪傑映画人たちが躍動する読み応えある歴史絵巻に仕上がっている。 東映といえば時代劇。同社は戦後間もなく中村錦之助らスターを前面に押し出し黄金期を迎えた。ところがその後、時代劇は凋落(ちょうらく)。すると次は任侠(にんきょう)映画、それが落ち目になると今度は『仁義なき戦い』などの実録ヤクザ映画と当たりそうな路線に次々と鞍替(くらが)えしていった。粗製濫造(そせいらんぞう)で節操も何もなかったわけだが、しかしそれは映画とは大衆娯楽に徹すること、高尚や前衛はクソらえという反体制的なエネルギーが満ち溢(あふ)れていたことの裏返しでもあった。ヒロ

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  • 「ブラック企業ビジネス」書評 信頼を食い潰すビジネスの論理|好書好日

    ブラック企業ビジネス [著]今野晴貴 昨今頻繁に目にする「ブラック企業」という言葉。だがその実態や社会背景は、今なお正しく認識されているとは言い難い。『ブラック企業 日いつぶす妖怪』で、単なる違法企業の問題ではなく、私たちの社会そのものに巣う悪弊として問い直した筆者による続作。書ではより具体的に、ブラック企業の業態を助けるさまざまな「ビジネス」を詳解している。 たとえば、ブラック企業を法制度面から支える弁護士や社会保険労務士のような「ブラック士業」という存在。彼らは過酷な雇用環境に対し声をあげた当事者を、脅しや法制度の意図的誤用などの手法を用い追い込んで行く。企業も士業も、利益を生むための行動はすべて「正義」というビジネスの論理。だが、社会全体からすれば部分の最適化に過ぎず、結果として弊害をもたらすと、筆者は警鐘を鳴らす。 学生の就職率を上げたい学校も、ブラック企業ビジネスの加担

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  • ジョン・アーヴィング「ひとりの体で」書評 過去形の甘さを引き出した傑作|好書好日

    ひとりの体で(上・下) [著]ジョン・アーヴィング アメリカを代表する作家アーヴィングの長編がコンスタントに書かれ続けている。 今回はヴァーモント州の小さな町に生まれたビル少年が、地域のアマチュア劇団に所属する家族(とはいえ、多くのアーヴィング作品に頻出するように実の父は“不在”なのだが)と共におおいに混乱しながら少しずつ年齢を重ね、やがて作家になっていく様子を丁寧に、しかも私小説めいた一人称で描く作品である。 ビルは思春期にすでに男女双方に惹(ひ)かれている自分に気づく。彼は「男とも女ともセックスしたいという欲望」を持つのだ。ひとりの体で。 そんな主人公の性的興味はまず図書館員ミス・フロストへと向かい、少年にとって小説そのものとの出会いが導かれる。劇団は母の次のパートナー、アボットを演出に迎えるから、そこでビルはシェークスピアやイプセンなどに触れ、広範な文学を身をもって“読んでいく”こと

    ジョン・アーヴィング「ひとりの体で」書評 過去形の甘さを引き出した傑作|好書好日
  • 東浩紀「福島第一原発観光地化計画」書評 「ここにあるもの」と向き合う|好書好日

    福島第一原発観光地化計画 [編]東浩紀 表紙を見ただけで時代の大きな転換を感じずにいられなかった。震災、原発事故で大きなダメージを受けた福島をテーマにしたが、これほどに派手で、サブカル系ムックを思わせる表紙をまとったことに。中も図版が多く、しかも同じ調子で明るく楽しく、いわゆる震災の暗く沈んだ反省調とは対照的である。しかも知識人が集まりながら、議論に終わらず、具体的提案満載であるところがすごい。何かを提案すること自体に、臆病で及び腰になってしまった昨今の日を突き抜けている。個々のデザインがあまりに1960年代風であるのがちょっと気になったが、とりあえず、形にしてしまう勇気がさわやかである。 明るさの裏には、観光化によって、工業化社会を超えていこうという、強いメッセージがある。工業化社会のあとを生きているという冷静な時代認識に基づき、観光化の可能性が追求されていて、説得力がある。 20

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  • フランシス・フクヤマ「政治の起源」書評 巨視的な視点で〈いま〉捉え直す|好書好日

    政治の起源 人類以前からフランス革命まで 上 著者:フランシス・フクヤマ 出版社:講談社 ジャンル:社会・時事・政治・行政 政治の起源―人類以前からフランス革命まで(上・下) [著]フランシス・フクヤマ 国内外問わず、時局的な政治解説に日々接していると、ふと巨視的な視点から〈いま〉を捉え直したくなる。 「政治制度の発展と衰退のメカニズム」に鋭く切り込んだ書はそのための格好の書だ。 まず何よりも評価すべきは、先史時代の社会や部族社会に関する人類学の知見を真摯(しんし)に取り入れながら、西欧近代の政治理論が前提としてきた合理主義的な人間観を客体視している点である。 それゆえ、近代的な政治制度の発展には「国家」「法の支配」「政府の説明責任」の三つの均衡が必要だと説く際も、ホッブズやロックやルソー、あるいはギリシャやローマから語ることはしない。 例えば、人類初の「近代国家」(=能力位の官僚制を

    フランシス・フクヤマ「政治の起源」書評 巨視的な視点で〈いま〉捉え直す|好書好日
  • 「医学的根拠とは何か」書評 身近で難解な問題を問い直す|好書好日

    医学的根拠とは何か [著]津田敏秀 福島第一原発事故以降、私たちはこれまで耳に馴染(なじ)まなかった「シーベルト」「ベクレル」等の単位を聞く機会が増えた。一般市民の関心は何より健康への影響だが、専門家の回答は釈然としないものばかり。実は何か重大な危機を隠蔽(いんぺい)しているのではないか? そんな猜疑心(さいぎしん)も煽(あお)られたが、事態はもっと構造的な問題から派生しているようだ。 疫学を専門とする筆者は、昨今の100ミリシーベルトを目安として「がんの増加が見られない」とする報告の問題点を指摘する。単に「リスクの上昇が証明されていない」との言及が、いつの間にか発がんの閾値(しきいち)(刺激となる最小限の値)のように考えられてしまっている、と。一方、WHO(世界保健機関)の健康リスクアセスメントは、100ミリシーベルト以下であってもがん発症の可能性を指摘。このい違いは、ICRP(国際放

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  • 「花森安治伝―日本の暮しをかえた男」書評 「まちがった後」を生ききる|好書好日

    花森安治伝―日の暮しをかえた男 [著]津野海太郎 花森安治といえば、センス抜群のイラストとグラフィックデザイン。そして広告を潔く排し、地道すぎるほど地道に行われた商品テストを載せた雑誌「暮(くら)しの手帖」。 1980〜90年代、広告収入に依存した雑誌全盛の時代、すでに花森亡き後であるが、この雑誌の、消費社会に徹底抗戦するかのごときたたずまいは、書店で孤高のオーラを放っていたのだった。それが世紀が変わり、景気の悪さも板に付いた頃か、若い世代からのいわゆるロハス的な視点の再評価が始まった。嬉(うれ)しい一方、何か引っかかる。 書を読んで腑(ふ)に落ちた。花森安治には、第2次大戦時に大政翼賛会の宣伝部に在籍し「お国のために」懸命に働いていた時期があった。 後年、「暮しの手帖」が百万部越えの国民雑誌となり、女装の反戦論者として有名になると、戦時中はあんなことをしていたくせにという揶揄(やゆ)

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  • 「デモクラシーの生と死」書評 証拠を突きつけ、過去の常識覆す|好書好日

    デモクラシーの生と死(上・下) [著]ジョン・キーン 書を読むと、古代・中世・近代を区分することになんの意味があるのか、そうすることで歴史の水面下で脈々と過去を未来につなげようとする人々のダイナミックな動きを抹消してしまうのではと強く思う。「過去のものごとの記憶を、デモクラシーの現在・未来に不可欠なものとして扱い」、従来の「西欧デモクラシーのドグマ」、なかでもデモクラシーを「非時間的」なものとして扱う『歴史の終わり』(F・フクヤマ)やデモクラシーを19世紀の発明とする『第三の波』(S・ハンチントン)を退けている。 これまで多くの人が当たり前だと思っていたことを、著者は次々と証拠を挙げて否定する。集会デモクラシーの起源は、紀元前6世紀末のギリシャ・アテナイではない。なんと前2千年の古代ミケーネ文明に「デーモス」(民衆)の直接の語根があり、東方にその起源があったことを、考古学的な新証拠によっ

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  • 鶴見太郎「座談の思想」書評 魅力引き出す優れた「しきり」|好書好日

    座談の思想 [著]鶴見太郎 「だらだら書いてから字数調整するのは素人よ。私なんか書き終えたときには字数がぴったり合っている。プロだから」。そう平然とのたまう作家に会って、縮こまったことがある。同じ意味で、このは言論のプロの話である。 座談は垂れ流しのおしゃべりではない。もっと立体的なものだ。一言一句も疎(おろそ)かにしないそんな文章のプロが、ふと舞台裏をのぞかせ、迷いやすきを見せたり、あるいは逆に、思わぬ展開に身をまかせて大胆な仮説を口にしたりするのが、座談の魅力だ。そして文章家からそんな気前のよさを引きだすのが、座談の優れたしきり手だ。 話がばらけるのはだめ、話を手際よくまとめるのもだめ。「話し手の口が自然にほぐれていく」よう気遣いながら、議論としては研ぎ澄ましてゆく、そんな場を拓(ひら)く才人として、著者は、融通とデリカシーを併せもった菊池寛、「大きく掴(つか)み、小さく掴む」力量を

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  • 「ナチュラル・ナビゲーション」書評 自然の摂理、理解するための知恵|好書好日

    ナチュラル・ナビゲーション 道具を使わずに旅をする方法 著者:トリスタン・グーリー 出版社:紀伊國屋書店 ジャンル:旅行・地図 ナチュラル・ナビゲーション―道具を使わずに旅をする方法 [著]トリスタン・グーリー 最近の探検界では現代機器に頼らず自然物を利用して旅をするのが好まれている。有名なポリネシア人の伝統航海術のように、機械化される以前の人類が保持していた身体知を駆使することで、現代人が知らない地球の未知の位相を見ることができる。要は探検とは時代の枠組み(システム)の外側を目指す行為なのだから、地理的にどこかに到達するという昔ながらの発想より、手法を駆使して未知の位相に到達した方がよっぽど現代的でスタイリッシュだというわけだ。 書はいわばそのマニュアルだ。GPSや通信機器どころか地図やコンパスさえ使わず、太陽や星々、砂漠の砂丘の向き、極地の雪の風紋、海のうねりのでき方などを読み解き

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  • 「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」書評 「顧客体験の優先」貪欲に追求|好書好日

    ジェフ・ベゾス果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者 著者:ブラッド・ストーン 出版社:日経BP社 ジャンル:経営・ビジネス ジェフ・ベゾス 果てなき野望―アマゾンを創った無敵の奇才経営者 [著]ブラッド・ストーン 1994年創業、2000年に日上陸した時、アマゾンは「オンライン書店」だった。それが今では、音楽映画などのコンテンツ、衣料、家電、飲料、サプリまで、驚異的な拡大を遂げた。書は謎に満ちた創業者、ジェフ・ベゾス氏について書かれた初の“半公認”評伝。特異なリーダー像と社の特質をあぶり出す。 実際、アマゾンは変だ。書籍購入の際に壁となる配送料をいち早く無料にした時には、果たして利益は出るのかと議論になった。商品検索すると中古出品(売り手は個人も多い)が同時に表示される。場合によっては他社サイトのリンクまで出るので、比較して買うことも可能。一体アマゾンは何を考えているのか…

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  • 「日本インテリアデザイン史」書評 闘争から離れ、浮遊する美しさ|好書好日

    インテリアデザイン史 [著]鈴木紀慶・今村創平 現在日のインテリアデザインは、その質とユニークさにおいて、世界でもトップのレベルにある。しかし、今まで、その包括的な歴史をカバーする書物がなかった。その意味で書は画期的であり、その意義は大きい。 しかし、読み終えて、なぜ、今までインテリアデザインの歴史が書かれなかったかも、納得した。一言でいえば、日のインテリアデザイン自体が「歴史」というものが伴うはずの葛藤、その結果としての、ダイナミズムを欠いているのである。すなわち、日のインテリアデザインはポスト「歴史」、ポストヘーゲル的な真空状態を漂っているのである。世界史を見渡してみれば、インテリアデザインとは、来闘争の場だった。階級や貧富の差異、都市と地方との格差、様々な対立、ギャップが、インテリアという立場を通じてせめぎあっていたのである。 そのような緊張が、日でも70年代の一瞬に

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  • グレッグ・イーガン「白熱光」書評 「あなたはDNA生まれですか」|好書好日

    白熱光 [著]グレッグ・イーガン 綿密な科学考証を元に大きな物語をつむぐハードSFを紹介したい。当代屈指のSF作家、グレッグ・イーガンの最新翻訳長編だ。 奇数章と偶数章で別々の物語が進行し、いずれも舞台は超未来の異質な世界。その「世界観」を楽しむことがひとつのポイントになる。 奇数章は、冒頭で主人公が「あなたはDNA生まれですか?」と問われるところから始まる。有機的な「生物」として進化した知性も、電子的な情報世界から出(い)でた知性も、区別なく暮らす「融合世界」が銀河に広がっており、人々は事実上の不死を謳歌(おうか)している。ただし銀河中心部には外との連絡を一切拒絶する「孤高世界」が存在する。この謎めいた銀河の核への旅を描く。 偶数章は、ブラックホールの周りを回る岩の中に洞窟を張り巡らせて住む異形の知性の物語。岩の内部からは天体観測できないため、宇宙についての知識は乏しい。力学の概念もない

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  • 「フェアな未来へ」書評 「予防的公正」は処方箋となるか|好書好日

    フェアな未来へ 誰もが予想しながら誰も自分に責任があるとは考えない問題に私たちはどう向きあっていくべきか 著者:ヴォルフガング・ザックス 出版社:新評論 ジャンル:社会・時事・政治・行政 フェアな未来へ―誰もが予想しながら誰も自分に責任があるとは考えない問題に私たちはどう向きあっていくべきか [編]W・ザックス、T・ザンタリウス 「公正(フェア)」とは何か。これは倫理的な問いに留(とど)まらず、私たち自身の利益に直接影響を与える問題だと書は述べる。たしかに私たちは、世界規模での不公正には関心が向かいづらい。目前の欠乏や不利益である予算不足や失業率にはすぐに影響されるが、気候変動や貧困、さらには国際的な資源競争などについては、自分たちの手に負えない話のように考えてしまう。だが、この見解そのものを改めるべき時期が来たようだ。 今の世界では、資源争いは局地的な問題にとどまらない。たとえば近年の

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  • 「図説 滝と人間の歴史」書評 原始と文明、イメージの変化は|好書好日

    図説滝と人間の歴史 (シリーズ人と自然と地球) 著者:ブライアン・J.ハドソン 出版社:原書房 ジャンル:自然科学・環境 図説 滝と人間の歴史 [著]ブライアン・J・ハドソン 滝の研究書が国内で出版されるのは大変珍しい。かつて滝の絵はがき1万3千枚を収録した私のコレクション集を出したことがあるが、それはビジュアルである。ある時期、頻繁に滝の夢を見たことがあり、夢に導かれるように諸国滝巡りが始まった。その結果、滝のシリーズ作品が生まれた。 滝は観光スポットであると同時にわが国では信仰の対象でもあり、修行の場としても古くから聖地として崇敬されてきた。時には他界への入り口として自殺の名所にも。 ところが海外では事情が異なる。ピクチュアレス的(絵になる風景)な瀑布(ばくふ)は、アドベンチャー体験を目的として滝壺(たきつぼ)近くまで遊覧ボートやヘリを大接近させ、観客の肝を冷やすかと思うと、樽(たる

    「図説 滝と人間の歴史」書評 原始と文明、イメージの変化は|好書好日
  • 「木材と文明」書評 人は森とどう付き合ってきたか|好書好日

    木材と文明 ヨーロッパは木材の文明だった。 著者:ヨアヒム・ラートカウ 出版社:築地書館 ジャンル:技術・工学・農学 木材と文明 [著]ヨアヒム・ラートカウ 木材や森林のことというと、読む前から何が書いてあるのか、なんとなく想像をつけてしまう。緑豊かに茂る葉や腐葉土の役割。多様な生物。木材加工の伝統技術。もしくは熱帯雨林の乱伐や酸性雨による枯死。針葉樹林を大量に植栽する弊害。人手不足で荒れゆく山林。森林浴。どのトピックスも繰り返しメディアに登場する。私たちは余程森と樹木が好きなのだろう。 いまさら何をという気持ちで書を開いて反省。先史時代から現代にわたりヨーロッパ、主にドイツ圏で、人々が森とどう付き合い、木材を利用してきたのか。歴史学者が開帳する人々の営みは、驚かされるものばかりだ。 とりわけ中世から近世ヨーロッパの森を大きく左右した三つの営み、造船、放牧、そして狩猟。戦争や貿易に向かう

    「木材と文明」書評 人は森とどう付き合ってきたか|好書好日