タグ

関連タグで絞り込む (232)

タグの絞り込みを解除

朝日新聞に関するtxmx5のブックマーク (273)

  • 書評・最新書評 : 驚くべき日本語 [著]ロジャー・パルバース - 隈研吾(建築家・東京大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■世界言語にもなりうる可能性 一種の日礼賛かと読みはじめたら、見事に裏切られた。筆者は、日語を礼賛するが、現在の日、日人に対して批判的である。日語と日人は別物であり、日語は「驚くべき」であるが、日人はもっとタフになって、自分を開き、国を開けと、筆者は提案する。 日語の持つ大きな可能性に対しての分析は、4カ国語を自由にあやつる筆者ならではの説得力がある。極めて限られた語彙(ごい)をベースにしながら、そこに接頭語、接尾語などを自由に付加することで、他の言語では達成できないような効率性、柔軟性を持つ日語は、充分に英語にも匹敵する世界言語たりえるという分析である。日語を他言語に通訳する場合、同一内容が倍の長さになるともいわれるが、日語の質的な効率性、機能性ゆえだったのである。オノマトペの多用も、日語の表現力を倍化させているらしい。 しかも日語は曖昧(あいまい)な言語

    書評・最新書評 : 驚くべき日本語 [著]ロジャー・パルバース - 隈研吾(建築家・東京大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 「憎むのでもなく、許すのでもなく ユダヤ人一斉検挙の夜」書評 心の「戦後」を乗り越えるまで|好書好日

    憎むのでもなく、許すのでもなく ユダヤ人一斉検挙の夜 著者:ボリス・シリュルニク 出版社:吉田書店 ジャンル:歴史・地理・民俗 憎むのでもなく、許すのでもなく ユダヤ人一斉検挙の夜 [著]ボリス・シリュルニク 東アジアで国家がいま、政治の道具として語る戦争に辟易(へきえき)していたとき、このに出会った。個人にとっての戦争には、心の傷とたたかう無数のなまなましい物語がある。 著者はフランス生まれのユダヤ人で、精神科医。書は、1944年、6歳半で強制収容所へ送られる直前に逃げ出してから、長く続いた心の「戦後」を乗り越えるまでをつづった自伝である。 ポーランド出身の両親は、ドイツに協力したビシー政権下にあったフランスの警察に捕らえられ、アウシュビッツ収容所に送られて亡くなった。彼自身も、堂の大鍋や輸送中のジャガイモの袋に隠れて非常線を突破し、終戦まで農場や学校の校舎に潜んで生きながらえた。

    「憎むのでもなく、許すのでもなく ユダヤ人一斉検挙の夜」書評 心の「戦後」を乗り越えるまで|好書好日
  • 「犬が私たちをパートナーに選んだわけ」書評 自然からの使者、関係が一変|好書好日

    犬が私たちをパートナーに選んだわけ 最新の犬研究からわかる、人間の「最良の友」の起源 著者:ジョン・ホーマンズ 出版社:阪急コミュニケーションズ ジャンル:暮らし・実用 犬が私たちをパートナーに選んだわけ [著]ジョン・ホーマンズ この冬、一匹の若い犬を連れて一緒に橇(そり)をひきながらグリーンランド北西部を旅していた。白熊が来た時に吠(ほ)えてもらうための番犬だ。賢いのかどうかはよくわからなかったが、でも複雑な感情を有する大事なパートナーであることにまちがいはなかった。 考えてみると不思議な動物だ。人間と共存することを選択し、人間から友と呼ばれるまでの信頼を勝ち取った唯一の存在。もともと私は「派」だが、先史時代に人間と犬がいかに協力して生き抜いてきたのかには興味はあった。しかし書には犬の起源の他にも、人間と犬を取り巻くそれ以上のことが報告されていて考えさせられた。 なるほどと唸(うな

    「犬が私たちをパートナーに選んだわけ」書評 自然からの使者、関係が一変|好書好日
  • 「いちから聞きたい放射線のほんとう」書評 データを積み重ね、落としどころ提案|好書好日

    いちから聞きたい放射線のほんとう いま知っておきたい22の話 著者:菊池 誠 出版社:筑摩書房 ジャンル:技術・工学・農学 いちから聞きたい放射線のほんとう [著]菊池誠・小峰公子 [絵]おかざき真里/原発事故と放射線のリスク学 [著]中西準子 東京電力福島第一原子力発電所における甚大な事故発生から3年が経過した。事故は大量の論点を放出し、私たちはそれぞれの立場に分断された。再稼働やエネルギー基計画を巡っては、容認と反対のグラデーションの中でそれぞれの主張が続けられてきた。の安全、居住基準、除染目標などについてもまた、それぞれの「見積もり」をめぐる衝突が生じてきた。 現状を安全と捉えるのか。危険と捉えるのか。被曝(ひばく)への漠然とした考え方は、科学的な理解とはまた別に、各人の身体的な感覚と密接に結びつく。事故直後、聞きなれない言葉が氾濫(はんらん)する中、細かいことを知る前に、自分の

    「いちから聞きたい放射線のほんとう」書評 データを積み重ね、落としどころ提案|好書好日
  • 「東北を聴く 民謡の原点を訪ねて」書評 祈りの空間に耳を傾けてみる|好書好日

    東北を聴く 民謡の原点を訪ねて (岩波新書 新赤版) 著者:佐々木 幹郎 出版社:岩波書店 ジャンル:新書・選書・ブックレット 東北を聴く 民謡の原点を訪ねて [著]佐々木幹郎 「がんばろう東北」。あなたは当はそんなことが言いたいのだろうか? 言葉が見つからないだけではないだろうか? ならば、いっそ沈黙し、耳を傾けてみてはどうだろうか。東北に。東北が何を語りかけてくるかに。 空元気を押し付けることで、豊かな機会を失っているのは、実は東北以外の人々ではないだろうか。 書は、津軽三味線の名人・二代目高橋竹山に密着し、東日大震災の直後に、被災地の村々を行脚した、稀有(けう)なドキュメントである。初代竹山はほぼ全盲の男性で、昭和8年に東北を襲った大津波から、彼を先導した人の機転と手助けで生き延びた経験を持つ。機転とは、視覚障害者は草の原には足をとられるだろうから、藪(やぶ)の斜面を掴(つか)

    「東北を聴く 民謡の原点を訪ねて」書評 祈りの空間に耳を傾けてみる|好書好日
  • 古井由吉「半自叙伝」書評 幼年との往復、積み重なる記憶|好書好日

    半自叙伝 [著]古井由吉 人は生き続ける限り、心の奥深くにいくつもの記憶を少しずつ積み重ねる。それらの記憶は、たいてい年齢を経るごとに移ろい変容してゆく。輪郭がぼやけて忘れてしまう場合もあれば、逆に輪郭がぼやけることで、かえって生涯にわたる意味合いを帯びてくる場合もある。 古井由吉は、書で自らの人生における二つの時期の記憶について語っている。第1部は2012年に発表された文章を、第2部は1982年から83年にかけて発表された文章を収めている。一方は40代、他方は70代になって来し方を振り返り、記憶に残った出来事や場面を、「矛盾はなまじ整合させずに」描き出している。 当然、両者には記憶の重なりがある。例えば、70年11月25日の三島由紀夫の自決を、著者は肺がんの母親を見舞いに訪れた実家のテレビニュースで知った。40代では三島由紀夫という文字そのものにまがまがしさを感じたのが、70代ではもう

    古井由吉「半自叙伝」書評 幼年との往復、積み重なる記憶|好書好日
  • 「自由か、さもなくば幸福か?」書評 監視社会化を積極的に評価|好書好日

    自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う (筑摩選書) 著者:大屋 雄裕 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット 自由か、さもなくば幸福か? 二一世紀の〈あり得べき社会〉を問う [著]大屋雄裕 全ての人間の身体にGPS機能付きのチップが埋め込まれた社会を想定してみよう。GPSとは、人工衛星を用いてその対象が地球上のどこにいるのかを正確に測定するシステムのことだ。つまり、あらゆる人間がいつ、どこにいるのかがつねに測定され、コンピューターに記録される社会である。 こうした社会では、犯罪が起こってもすぐに犯人は特定されるだろう。たとえ殺人犯が遺体からチップを取り除いて犯行を隠匿しようとしたとしても無駄だ。チップが取り除かれたときにそこにいた人間は特定されるからだ。生体反応によって稼働するチップならば、よこしまな人間が自分の身体からチップを取り除いた時点で、警察

    「自由か、さもなくば幸福か?」書評 監視社会化を積極的に評価|好書好日
  • 「山下清と昭和の美術」書評 美術と福祉のはざまにある偶像|好書好日

    山下清と昭和の美術―「裸の大将」の神話を超えて [編]服部正、藤原貞朗 山下清の作品を初めてじっくり見たのは、3年前、長野県茅野市の《放浪美術館》を別用のついでに訪問したときだ。その緻密(ちみつ)、繊細、艶(つや)やかな作品群は、ぼくが漠然と抱いていた無骨で素朴という山下清のイメージを根こそぎくつがえした。さらに驚いたのは、山下清の作品や生涯を俯瞰(ふかん)した手頃な研究書が、美術館の売店でほとんど見当たらなかったことだ。 なぜ、ぼくは、それまで山下清の作品は素朴だと勝手に決めてかかっていたのか? なぜ、見通しのよい山下清論が書かれていなかったのか? この二つの謎が、以来、喉(のど)にささった魚の骨のようにずっと気になっていたのだが、ようやくこのによって、それらについての明快な回答が得られた。読み終わって、ぼくはとても満足している。 山下清は美術界からは「精薄の特異作家」としてまともに相

    「山下清と昭和の美術」書評 美術と福祉のはざまにある偶像|好書好日
  • 戸田山和久「哲学入門」書評 「文学」に背向け「科学」と歩む|好書好日

    哲学入門 [著]戸田山和久 何のヒネリもない直球の題名に思えるが、読み始めてすぐ、この「哲学」と「入門」の二語の合体には、きわめて野心的かつ挑発的な意味が込められていることを知らされる。 著者は書には「歴史上有名な哲学者」がほとんど出てこないと述べ、ミリカン、ドレツキ、ペレブームといった、耳慣れない哲学者の名前を挙げる。そして、このが、「科学の成果を正面から受け止め、科学的世界像のただなかで人間とは何かを考える哲学」の「入門」であると宣言する。「科学的世界像」とは別の言葉で言えば「物理主義/自然主義/唯物論」だが、著者はこれを「モノだけ世界観」と言い換え、右の意味での「哲学(者)」にとっては「存在もどきをモノだけ世界観に描き込む」ことが課題であると言う。では「存在もどき」とは何か。それは「ありそでなさそでやっぱりあるもの」、たとえば「意味」「機能」「情報」「表象」「目的」「自由」「道徳

    戸田山和久「哲学入門」書評 「文学」に背向け「科学」と歩む|好書好日
  • 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」書評 存在し続ける過去、勇気持ち向き合う|好書好日

    色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 [著]村上春樹 発売当日まで他の一切が伏せられていたので、このいささか奇妙な題名は、巷(ちまた)でさまざまな臆測を呼んでいた。だが、謎めいたタイトルは、この小説の内容をきわめて端的に表していたのだった。 多崎つくるは36歳、独身。少年の頃からの駅好きが嵩(こう)じて、鉄道会社の駅舎の設計管理部門に勤めている。名古屋で高校に通っていた頃、彼には男女2人ずつの、親友と呼べる仲間たちがいた。5人は、それぞれタイプはまったく異なっていたが、むしろそれゆえに、まるで正五角形のように完璧な親密さを形成した。つくる以外の4人は、姓に色が入っていた。あだ名は「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」。つくるだけ色彩を持っていなかった。そして彼だけが東京の大学に進学した。20歳を前に帰省した際、つくるは突然、4人から一方的に絶縁を宣告される。理由はまったく思い当たらなかった。

    「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」書評 存在し続ける過去、勇気持ち向き合う|好書好日
  • ダニエル・ラノワ「ソウル・マイニング 音楽的自伝」書評 「魂の採掘」でサウンドを革新|好書好日

    ソウル・マイニング 音楽的自伝 [著]ダニエル・ラノワ ダニエル・ラノワは、カナダ出身のミュージシャン、レコーディング・エンジニアである。鬼才ブライアン・イーノとの共同作業——とりわけアイルランドの世界的ロック・バンドU2のアルバム——や、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ネヴィル・ブラザーズといった有名アーティストとの仕事で知られている。書は、とはいえ音楽ファン以外にはあまり知られていないラノワが、自ら半生を振り返った一冊である。 カナダの仏語圏ケベック州で生まれたラノワは、10歳までフランス語しか話さなかった。両親の離婚によって英語圏のオンタリオ州に引っ越して以後、幼い頃から身近にあった音楽を一生の仕事にすると決め、兄と自前のスタジオを開設する。安くて上手(うま)くて創意工夫に富んだエンジニアとして名を馳(は)せたラノワに、ブライアン・イーノと名乗る男からコンタクトがある。既にイーノは

    ダニエル・ラノワ「ソウル・マイニング 音楽的自伝」書評 「魂の採掘」でサウンドを革新|好書好日
  • 「石原慎太郎を読んでみた」書評 浮かび上がる小説家の肖像|好書好日

    石原慎太郎を読んでみた [著]栗原裕一郎、豊崎由美 舌鋒鋭い書評家の豊崎由美と歯にきぬ着せぬ評論家の栗原裕一郎が、石原慎太郎の小説を片っ端から「読んでみた」である。もとは月1回で1年間続いたトークイベントであり、後半では映画評論家の高鳥都と作家の中森明夫がゲストに迎えられている。 確かに近年の石原慎太郎は、政治家としての顔が圧倒的に知られており、小説はいまだに芥川賞受賞作『太陽の季節』か、石原裕次郎を描いた『弟』ばかりが挙げられる。そこで2人は入手困難な作品も含め、次から次へと「石原慎太郎の小説」を読んでゆく。ルールとされたのは、「政治家・石原慎太郎」と「元芥川賞選考委員・石原慎太郎」をカッコに括(くく)るということ。あくまでも一人の作家として評価しようというのである。そしてその結果、おそらく両人とも事前には想定していなかった「小説家石原慎太郎」の肖像が、じわじわと浮かび上がってくるのだ

    「石原慎太郎を読んでみた」書評 浮かび上がる小説家の肖像|好書好日
  • 「天國のをりものが―山崎春美著作集」書評 アングラ雑誌、彩った早熟少年|好書好日

    天國のをりものが―山崎春美著作集1976—2013 [著]山崎春美 1970年代後半から80年代前半にかけて、山崎春美という名前は常にエキセントリックな輝きと共にあった。彼が率いたガセネタとタコというバンドは、日音楽シーン、それも非常にアンダーグラウンドな音楽の世界において、登場した時から伝説と化していた。 そして彼があちこちのやはりアンダーグラウンドな雑誌に書き散らしていた種々雑多な文章は、偶然目にするたびに異様な吸引力を発揮して私を捕らえた。彼はいつも、清新かつ邪悪な視線で世界を見回しながら、当時凄(すさ)まじい勢いで数量を増しつつあった音楽や書物から対象を選び出しては、直観的でありながら強靱(きょうじん)な分析力を発揮して、独創的なレトリックを駆使した華麗な文体で誌面の隅を秘(ひそ)かに彩っていた。殊更に熱心に彼の文章を渉猟していたわけではないが、私はライター山崎春美のファンだっ

    「天國のをりものが―山崎春美著作集」書評 アングラ雑誌、彩った早熟少年|好書好日
  • 佐伯一麦「渡良瀬」書評 労働の日々、淡々と活き活きと|好書好日

    渡良瀬 [著]佐伯一麦 1993年から96年まで、月刊文芸誌「海燕(かいえん)」に連載されたが、雑誌の終刊によって中絶したままになっていたのを、このたび17年ぶりに続きが書き下ろされて完成の運びとなったのが書である。佐伯一麦の他の小説と同様、いわゆる私小説であり、主人公はほぼ作者自身だと言ってよい。物語られるのは、88年の9月から89年の春先まで、すなわち昭和の終わりから平成のはじまりにかけて、である。 まだ20代だがと3人の子を持つ南條拓は、思う処(ところ)あって東京から茨城県西部の古河市に移り住み、配電盤の製造工場に勤め始める。の神経過敏、長女の緘黙(かんもく)症、息子の川崎病といった複数の家族の問題を抱えながら、彼は様々なタイプの工員たちと触れ合いつつ、労働の日々を過ごしてゆく。題名は、拓が休日に赴く渡良瀬遊水地から採られている。 私小説であるから、ドラマチックな物語性などは、

    佐伯一麦「渡良瀬」書評 労働の日々、淡々と活き活きと|好書好日
  • 「野生のオーケストラが聴こえる」書評 耳を澄ませば現れる「音の風景」|好書好日

    野生のオーケストラが聴こえる サウンドスケープ生態学と音楽の起源 著者:バーニー・クラウス 出版社:みすず書房 ジャンル:芸術・アート 野生のオーケストラが聴こえる―サウンドスケープ生態学と音楽の起源 [著]バーニー・クラウス バーニー・クラウスは、スタジオ・ギタリストとしてキャリアをスタートさせた。ポール・ビーヴァーと出会い、二人で『地獄の黙示録』『ローズマリーの赤ちゃん』などの有名映画テレビの音響を手掛けると共に、ビーヴァー&クラウスとして5枚の不思議なアルバムを発表した。 だがビーヴァーが急逝し、独りになったクラウスは、40歳で音楽業界を去って大学院で海洋生体音響学を専攻、クリエイティブ・アートの博士号を取得した。書は「サウンドスケープ(音の風景)」の先駆者であるクラウスの半・自伝であり、彼の考えを開陳した一冊である。 「自然の音を求めて音楽業界を後にしたと思われるかもしれないが

    「野生のオーケストラが聴こえる」書評 耳を澄ませば現れる「音の風景」|好書好日
  • 「売女の人殺し ボラーニョ・コレクション」書評 この世の夕暮れ、描き出す言葉|好書好日

    売女の人殺し ボラーニョ・コレクション [著]ロベルト・ボラーニョ ロベルト・ボラーニョの小説を読んでいると、いつも強く感じさせられるのは、世界が終わっていっている、という印象である。終わりに向かっている、のではなくて、今まさに終わりつつある、という、進行形の感覚。しかし、それは終末論的などと呼ばれるような大仰なものとは違う。もっと仄(ほの)かで、切なくて、甘やかでさえあるような、延々と続く夕暮れのような、それをずっと眺めているような、不思議な感覚。 チリ出身の作家ボラーニョは、2003年、50歳で没した。その早過ぎる死の少し前から、著作が相次いで外国語に翻訳され、彼は世界から「発見」されつつあった。遺作として出版された『2666』は、長編小説5冊分という分厚さにもかかわらず、各国で読まれ、高い評価を受けている。日でも、ささやかなベストセラーになったことは記憶に新しい。 「ボラーニョ・コ

    「売女の人殺し ボラーニョ・コレクション」書評 この世の夕暮れ、描き出す言葉|好書好日
  • 「動きすぎてはいけない」書評 繋がり過ぎる時代、あえて留まること|好書好日

    動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 著者:千葉 雅也 出版社:河出書房新社 ジャンル:哲学・思想・宗教・心理 動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 [著]千葉雅也 思想家を論じるには大きく二通りの方向がある。「○○は何を考えていたか」と「○○から何が考えられるか」。もちろんどちらかを選ぶということではなく、両者は分かち難く絡み合っているのだが。前者を「解説と分析」と呼ぶなら、後者は「応用と展開」ということになるだろう。たとえばフランスの哲学者ジル・ドゥルーズであれば、その著作をつぶさに読み込み、別の言葉に丁寧に置き換えてゆくのが前者であり、そこから思い切って離脱し跳躍し、しかしドゥルーズを越えようとするのではなく、いわばドゥルーズと共に新たな思考を始めることによって、ドゥルーズの哲学から何が考えられるのか、いや、もっと踏み込んで言えば、実際にはそうして

    「動きすぎてはいけない」書評 繋がり過ぎる時代、あえて留まること|好書好日
  • 「デレク・ベイリー インプロヴィゼーションの物語」書評 世界に向きあう自由のレッスン|好書好日

    デレク・ベイリー インプロヴィゼーションの物語 [著]ベン・ワトソン デレク・ベイリーは英国のギタリスト。1930年に生まれ、2005年に没した。彼はフリー・インプロヴィゼーションと呼ばれる特異な音楽の創始者のひとりとされている。著者ワトソンは、ベイリー人と関係者への取材を基に、この大部の評伝を書き上げた。原著の刊行以来、音楽ファンの間では邦訳が待ち望まれていた。日語にしたのはベイリーの不朽の名著『インプロヴィゼーション』の訳者でもあり、人とも長年に及ぶ親交があった木幡和枝氏である。 典型的な労働者階級の一家に生まれ、やがて音楽に興味を持ち、ギター奏法を独習し、プロのギタリストとして稼ぐようになったベイリーは、10年近い月日を商業的な音楽の世界で過ごした後、ジャズのアドリブとは全く異なる「即興演奏」の可能性を発見し、追究し始める。それは過去には存在していなかった決定的に新しい音楽だっ

    「デレク・ベイリー インプロヴィゼーションの物語」書評 世界に向きあう自由のレッスン|好書好日
  • ゼンショーニュース | 企業情報 | ゼンショーホールディングス

    ゼンショーホールディングスのニュースリリースを掲載しています。

    ゼンショーニュース | 企業情報 | ゼンショーホールディングス
  • 路上の民主主義―自ら考え動き出す人たち:朝日新聞デジタル

    変わらなければ。 変えなければ。 東日大震災と東京電力福島第一原発事故を経験した2011年。「第二の敗戦」といった言葉も飛び交うなか、日社会は深い自省と、根源的な変革を求める空気に満ちていた。 それを目に見える形で示したのが、震災から約半年後に東京で開かれた「さようなら原発」集会だ。主催者発表で6万人が参加。ノーベル賞作家・大江健三郎さんは訴えた。「何ができるか。私らにはこの民主主義の集会、市民のデモしかない」 あれから3年近くが経った。■首相がまく種 自民党が政権に戻り、原発再稼働が推進され、大型公共事業が復活する。 何も変えられなかった。 冷めた人。折れた人。疲れた人。民主党政権への深い失望と相まって膨らんだ諦念(ていねん)が、安倍政権の政治的原資となってきたことは否めない。 反対意見に向き合い、議論を深める。民主制の根幹だ。しかし首相はどうやら、選挙で選ばれた、最高責任者の自分が