音楽好きなら誰にでも何枚かの「夢のアルバム」があると思うのだが、私にとって「ガスター・デル・ソルのニューアルバム」は、まちがいなく「夢の一枚」だった。実際、過去に何度も想像したことがある。だが「夢」であるからには、けっして実現されることはないだろう、とも思っていたので、本作のリリースがアナウンスされた時には、ほんとうに驚いてしまった。 ガスター・デル・ソルは、デヴィッド・グラブスとジム・オルークのデュオ・ユニットである。デヴィッドはアメリカ、イリノイ州シカゴ生まれだが、ケンタッキー州のルイヴィルで10代半ばにしてハードコア・パンク・バンド、スクワロル・バイトのメンバーとして頭角を現した(それ以前にも複数のバンド経験がある)。その後、ワシントンDCに移ってバストロを結成、スティーヴ・アルビニ録音のソリッドなサウンドで注目された。バストロは当時のポスト・ハードコア・シーンの重要バンドのひとつと
「オール・カインズ・オブ・ピープル」のリリースに合わせて、東京、大阪で三日間、6セットが行なわれたジム・オルーク一座のライヴ。僕が見たのは初日、東京ビルボードでの4月15日のセカンド・セットだった。 バート・バカラックの音楽というのは、本来、ゴージャスなものだ。若き日にはマレーネ・ディートリッヒのオーケストラ・コンダクターを務めていたバカラックは、エンターテインメントの世界の掟をよく知る業界人でもある。作曲家としてはとても繊細な作品を生み出してきたが、ステージ上ではぎらぎらした野心家ぶりも覗かせる。1960年代の後半、ビートルズをはじめとするロックの波が乱暴に世界を覆い尽くそうとする中で、バカラックの音楽は、贅を尽くした極上のエンターテインメントの伝統を守り通そうとする側の、最大の抵抗勢力でもあった。 しかし、この日の一座ときたら、どうだろう。あたかも農民達の楽団が、貴族の音楽を演奏してい
日高理樹(リキ・ヒダカ)は、彼の音楽がそうであるように、生粋のボヘミアンなのだろう。いまの日本では絶滅に近い、社会の規範に囚われることがないいわば自由人。いったい彼は何のために音楽を作っているのだろうか。崩壊したフォークソング、解体されたギター、無調と調性とを超えた響き、アマチュアリズムと実験……。 ぼくが彼の音楽を初めて聴いたのは2016年の『Abandoned Like Old Memories』だったが、当時もいまも、彼はエスタブリッシュな音楽シーンにはいない。それはこの世界の秘密の入り口から下っていく地下室においてのみ演奏され、そこに遙々やって来た者たちのみが耳にすることができると、まあそんなところだ。 しかしながら彼の彷徨にも、どうやら拠点と呼べる場所があるらしい。2005年10月に広島の中区にオープンしたレコード店〈Stereo Records〉である。LAで生まれ東京で育ち、
「この人はできると思ったのはグレンさん以来でした。私がドラムスに求めることは、ドラムスをどう叩くかではなくて、曲をドラムスでどう演奏するかなんです」 これは『Simple Songs』(2015年)リリース時に刊行された『︎別冊ele-king ジム・オルーク完全読本』(2015年、Pヴァイン)内で、ジム・オルークが本稿の主人公である山本達久を評した際の言葉だ。同書に収められたインタビューで山本達久は、ジムに手渡されたCD-Rによって音楽の聴き方が激変したと語っている。なお、「グレンさん」というのは、今やWilcoのメンバーとして知られるグレン・コッツェである。 ジム・オルークと石橋英子とのカフカ鼾や「マームとジプシー」の音楽をはじめとした様々なプロジェクト、七尾旅人やUA、前野健太のサポートドラムとして名を馳せる山本達久。彼が4年の歳月をかけて完成させた『ashioto』『ashiato
--- 今回のアルバムですが、全体で約38分で一曲、そして、すべてジムさんが楽器をプレイしているということなんですが、どういったコンセプト、アイデアからスタートしたんですか? 「最初の考えは、3年前ですから覚えていないけれど、今回は状況が違いますから、昔、レコードを作った時、シカゴに住んでた時は自分のスタジオがあって、いろんなバンド友だちがいて、ほとんどなんでもできた。 でも、今回はそういうスタジオがなかったので、どうしようかと考えた。ほとんど8年間、自分の音楽を作らなかったので少し忘れちゃった。別の人とものを作るのは別の立場で作るので、自分のものを作るとなると、「この人は誰ですか?」と(笑)。半分はコンセプトで、半分は状況的に仕方がなかった。でも、一曲で自分ひとりでというのは最初から決めてました。でも多分、コンセプトじゃないと思う。チャレンジと思いました。できるかどうか分らなかったので
Tone Glowに掲載されているジム・オルークのインタビュー記事の翻訳です。とても長文で面白い内容ですがその長さゆえに翻訳ソフトにかけるのだけでも結構手間だと思うのでそういう方のためにまとめて載せておきます。 ただし基本的にDeepL翻訳にかけたものをそのまま載せているだけなので、細かいニュアンスが間違っている箇所もあるかもしれません。くれぐれもその点留意のうえ、できれば原文も確認しながら読んでいただければと思います。 元記事 “Joshua Minsoo Kimが編集した実験音楽に特化したニュースレター「Tone Glow」へようこそ。Tone Glowでは、インタビュー、ダウンロードコーナー、そして投稿者全員が同じアルバムについて書くライターパネルの3つの特集を毎号掲載しています。今週のTone Glowでは、キム・ミンソがジム・オルークにインタビューした内容を特集しています。2人は
Welcome to Tone Glow, a newsletter focused on experimental music edited by Joshua Minsoo Kim. Tone Glow generally has three features in each issue: an interview, a “download corner,” and a writer panel in which our contributors all write about the same album. This week, Tone Glow is dedicating its entire issue to an interview that Kim conducted with Jim O’Rourke. The two spoke on the phone on Apri
【Interview】ジム・オルークが語るアブストラクトなアンビエント作Text by Tsuji. Taichi 作曲家、シンガー、マルチ奏者、エンジニア、プロデューサーなど幾つもの顔を持ち、ロックから現代音楽、劇伴に至るまでさまざまなシーンを股にかける鬼才=ジム・オルーク。1990年代にシカゴ音響派の旗手と目され、2004年にはウィルコのプロデューサーとしてグラミーを受賞。近年は日本を拠点に活動し、くるりやカヒミ・カリィ、石橋英子、前野健太といったアーティストのプロデュースを手掛けながら、自作の発表にも取り組んでいる。この6月にリリースされたアルバム『sleep like it's winter』は、ボーカルを中心とした前作『Simple Songs』(2015年)とは打って変わってアブストラクトなインストゥルメンタル作。全1曲/44分という尺の中で数々の素材が精緻に組み合わさっており
ジム・オルークがbandcampにてリリースしている『Steamroom』シリーズは、これを書いている2018年11月の時点で42作がリリースされている。その内容は大雑把に分類するならリリースの直近の期間に制作された新録音源、過去の作品をデジタルアルバムとしてリリースし直した再発音源、そして(映画やイベントの為に制作された音楽、ライブ演奏の録音、古いセッションの掘り起こしなどの)蔵出し音源の3つに分けられる。 本記事では現状リリースされている42作品について、それら3つのどれにあたるかや、録音の時期、オリジナルリリースはどの作品か、などの情報をまとめたうえで、全ての音源を聴き、その感想も短く記していく。 作品のタイトルの後にまずリリース日、次に3つの分類のうちどれに当たるかを記述。録音時期については画像の下の文章中に記載。 新録と蔵出しどちらに分類するか難しいものがいくつかあったが、基本的
真剣勝負に備えて、一つだけ危惧したこと。 去る2008年2月5日。日本映画界の雄・若松孝二監督にインタビュー。入魂の最新作『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』についてお話を伺いました。 インタビューの模様をお伝えする前に、どうしてもお伝えしておきたいことがあります。 この作品、昨年秋に鑑賞させて頂いたのですが、以来ずっと「大傑作だ!」とアピールし続けています。映画鑑賞で、これほどの衝撃を感じたことは決して多くありません。圧倒。そう、まさに圧倒です。鑑賞後、あまりの充足感に言葉を失うという、このえもいわれぬ充足感を、1人でも多くの方と共有したいと心の底から願っているからです。 私は、連合赤軍やあさま山荘事件をリアルタイムで知らない世代の人間です。映画や書籍を通じて、その内容を少しは知っていましたが、決して詳しくはありませんでした。なのに、「連合赤軍」という語句にはネガティブなイメージを持って
HOME>INTERVIEW>石橋英子、ニューアルバム「The Dream My Bones Dream」発売記念 メンバーインタ... 石橋英子、ニューアルバム「The Dream My Bones Dream」発売記念 メンバーインタビュー 2018年7月4日に発売となった4年ぶりとなるオリジナル・アルバム「The Dream My Bones Dream」発売を記念して、石橋英子が用意した質問に、アルバムに参加して9月21日に渋谷WWWにて開催されるレコ発ライブにも参加するメンバーたちが答えました。 「The Dream My Bones Dream」完成までの制作過程にも関わってきたみなさまの貴重なインタビューとなります。ぜひご覧ください。 ジム・オルーク ― このアルバムでのご担当は? 録音エンジニア、ミックスエンジニア、シンセー、ペダルスチール、意見箱 ― 最近買った機材は何で
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く