(第249号、通巻269号) 「赤とんぼ」を子どもの頃、口ずさんでいて分からなかったのは1番の歌詞の「おわれてみたのは」の「おわれて」だった、という人が少なくない。漢字で「負われて」とあれば、誤解は避けられるが、耳から聴いただけでは「追われて」とも受け取られるからだ。いったい何に(or誰に)追われるのか、という疑問だ。もちろん、ここは「負われて」つまり「背負われて」の意。作詞者の三木露風《注1》は幼い頃、子守娘におぶわれて赤とんぼを見た、のである。子守娘とは、3番の歌詞に出てくる「姐や」を指す。 この「姐や」を「姉や」と勘違いし、露風の姉のことだと解釈している人もいる。文春文庫の高島俊男著『お言葉ですが…4 広辞苑の神話』に、ある雑誌を見ていたら〈現在では15歳で嫁に行くなどとは考えられないし、少子化で15歳の長姉が(歳の)離れた何番目かの弟を背負って子守りすることもなくなった〉とあったこ