アルプスPPSで「断裁」を担当するのは、薄井良和さんである。薄井さんは、断裁という仕事に就く前から印刷業に携わり、自前で中古のオフセット単色枚葉印刷機を購入して単色機でカラー印刷を行うなどの難しい仕事にチャレンジしてきた。 しかし時代はバブル全盛期。単色機ではカラー印刷に時間やコストが掛かり、余力のある企業は設備投資が盛んで、価格競争も過熱化。単身印刷業を営んでいた薄井さんは「このまま印刷だけやっていては立ち行かない」と起業した印刷会社を畳み、同業の印刷会社に転職する。そこで出会ったのが「製本」という工程だった。 「やっぱり刷りモノが好きだったので、印刷というフィールドから離れることはまったく頭にありませんでした。でもどうせ転職するなら、違う現場も見てみたい。そこで製本工程を見て、強く興味を惹かれたのです」 当時、薄井さんが先輩の職人にいわれ続けたのが「お前の強みは印刷を知っていること」と