中国の世界遺産登録ブームの陰で、都市から遠い少数民族居住区が商業主義の波に洗われている。 世界遺産を売り物にした観光振興が伝統文化を損なうとの懸念も広がっている。 現存する世界最後の象形文字・トンパ文字を伝えるナシ族が暮らす中国南西部の雲南省・麗江古城。木造家屋の間を石畳の細道が迷路のように走る。 1997年、世界文化遺産に登録された。土産店やホテル、レストラン、バーが次々と営業を始め、今では3・8平方キロ・メートルの城内に店舗が2000以上。夜はネオンと大音響の音楽に包まれる。2009年は国内外から758万人が訪れ、観光収入は人口110万人の麗江市の総生産額の75%に当たる88億元(約1056億円)に上った。 麗江市は建物の維持修復を含めた古城保護に15億元(約180億円)以上を投入した。一方で、城内人口15万人の7割以上を占めたナシ族は、物価の高騰や生活環境の悪化で半数以上が姿を消した