2009年11月、菅直人副総理(当時)は「デフレ宣言」を行なった。このとき、元日銀副総裁の岩田一政氏は「流星光底長蛇を逸す」との思いを禁じえなかったという。 岩田氏が副総裁の職についていたのは2003年3月から2008年3月までだが、この間、デフレという名の龍退治こそが責務と考えていたそうだ。しかし、デフレ・ドラゴンの息の根を止めることはついにかなわなかった。一度は息絶えたかにみえた龍は、ただ地に臥せていただけだったのだ。 『デフレとの闘い 日銀副総裁の1800日』は、そんな岩田氏の回想録である。と同時に、おもに経済理論面から、日銀をふくむ世界の中央銀行の金融政策を概説した経済書である。 著者の志向によるものか、あるいは各方面への配慮のせいか、特定の人物を名指しして「あのとき委員会の誰それはこう言っていた」というような、日銀の内幕をさらすような話はほとんどない。だから、中原伸之氏の『日銀は