23歳のファブリチェ・ンダヤムダゼさんは、母親のバシリチェさんのことを話すとき、いつも自慢げに顔を輝かせる。 「母は17歳のときから牛の糞で絵画を制作してきました。その手法は、母がその母親から教わったものです。我々の民族ではかつて、イミゴンゴの作り方を学ぶことは、女性として一人前になるために必要なこととされていました。あの虐殺の後、母はイミゴンゴの技術を生かして、私たち家族を支えてきました」 イミゴンゴはルワンダに伝わる伝統絵画で、その起源は18世紀に遡るといわれる。基本的な作り方はこうだ。まず牛の糞と灰をこねて作った粘土状の素材を使い、平らな板の上に螺旋、ひし形、稲妻型、正方形などの精巧な幾何学模様を、立体的に構成していく。これを乾かしてから、盛り上がっている模様の部分に天然顔料で色を着ける。地元の人々の間では、この技術を考案したのはギサカのケメンイ王の息子、カキラ王子であると伝えられて