日本からアメリカへ、アメリカから韓国へ。 過酷な海外出張のスケジュール。 それをこなそうとして、父の心臓の血管は切れた。 父は運が強くて、死にはしなかった。 でも、倒れた2日後には職を解かれた。 代理を立てるのではなく、後任人事が発令された。 父の失脚のシナリオは、既に誰かが描いていた。 あたしは父を殺されかけた。 合法的な人殺しは、たしかに存在する。 邪魔者を消せるなら、過労死のお金を払っても良い。 そう思う外道がいるのかも知れない。 「社長にケンカ売らなきゃ良かった」 退院した父は、疲れた顔を見せながら、そう言った。 権力闘争なんて、大嫌い。