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ブックマーク / mmpolo.hatenadiary.com (13)

  • 梯久美子『百年の手紙』を読む - mmpoloの日記

    梯久美子『百年の手紙』(岩波新書)を読む。副題が「日人が遺したことば」で、20世紀の100年間に日人が書いた100通あまりの手紙を紹介している。最初に置かれたのが田中正造から明治天皇への直訴状だ。足尾銅山の鉱毒を訴えている。ほかには、幸徳秋水から堺利彦へ、中国戦線で亡くなった映画監督山中貞雄の遺書、硫黄島で玉砕した市丸利之助少将からルーズベルト大統領にあてた手紙、終戦直後に昭和天皇から皇太子へあてた手紙、夫婦や恋人同士の手紙、親から子への手紙、正岡子規から夏目漱石へ、そして死者からの遺書と弔辞など。 強く印象に残った手紙。シベリア抑留中に亡くなった山幡男の遺書は戦友たちが手分けして暗記し、長文の遺書を遺族に伝えた。なぜ暗記して伝えたのか? 遺書を記憶して届けるという方法を考え出したのは山自身だった。やっと帰国が決まっても、書いたものを持ち帰ろうとしているのが見つかれば、また収容所に

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  • 山口晃『ヘンな日本美術史』を読む - mmpoloの日記

    山口晃『ヘンな日美術史』(祥伝社)を読む。ちっともヘンではないしおもしろかった。もしヘンだというなら、取り上げ方だろう。画家の選択がオーソドックスではなくユニークなのだ。まず日の古い絵として、鳥獣戯画、白描画、一遍聖絵、伊勢物語絵巻、伝源頼朝像が取り上げられる。 ついで章を変えて雪舟が詳しく語られる。なぜ雪舟は邪道を選んだのか「破墨山水図」、雪舟の生み出す恐るべき絵画空間「秋冬山水図」、莫迦っぽい絵「慧可断臂図」、妖しい空間の描き方「天橋立図」等々。 次の章は「絵の空間に入り込む」として洛中洛外図が語られる。岩佐又兵衛の舟木、狩野永徳の上杉、群を抜いて異様だという高津を素材に洛中洛外図の見方がていねいに語られる。舟木には2,700人の登場人物が描かれている。山口は大学生時代にこの絵を見たとき「非情にシビれた記憶がありまして、絵の前で叫びだしたくなったのはそれが初めてでした」と書

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  • 十一月画廊の川畑 絵展"Un Profil"が良い - mmpoloの日記

    東京銀座7丁目の十一月画廊で開かれている川畑 絵展が良い(10月6日まで)。川畑は1981年神奈川県藤沢市生まれ、2008年東京藝術大学美術学部日画専攻を卒業している。2009年に横浜馬車道大津ギャラリーで初個展、2010年に十一月画廊で、2011年にギャラリイKで個展を開いていて、今回が4回目となる。十一月画廊では2回とも今回と同じ女性像、ギャラリイKでは電線のある風景を描いていた。女性像と電線て何だろう。 今回のギャラリーのカタログより作家の言葉。 横顔は自分ではなかなか見ることがない姿。 意識しにくいからこそ見える自分の輪郭。 想像するより美しくて、醜くて、最も自然な顔。 外からみた、真実の自分。 今回の女性像はほとんどが横顔で、みなきれいな女性像だ。それらの作品がなぜか魅力的なのだ。私はどちらかと言えば美人画が苦手な方だ。それなのに川畑の女性像に、むしろ美人画に近い印象があるにも

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  • 山崎正和『世界文明史の試み』の書評から - mmpoloの日記

    毎日新聞2012年1月29日の書評欄に山崎正和『世界文明史の試み−−神話と舞踏』(中央公論新社)の書評が載っていた。書評子は三浦雅士、その一節、 特筆すべきはまず思索の起点そのものを百八十度転換させたこと。いかなる思索であれ、意識、すなわち「我思うゆえに我あり」から始めるのが定番だが、著者は身体から語り始める。身体は呼吸にせよ歩行にせよ反復から成り立つ。それがうまくいかなかったときに初めてそれまでの身体の慣習が意識される。意識は実体ではない。先験的あるいは超越論的といわれる時間空間意識でさえも身体が育んだ慣習にほかならない、というのだ。明確なカント批判だが、分かりやすく説得力がある。「神話と舞踏」という副題が腑に落ちる。 なんと魅力的な考え方だろう。下等生物には意識がないこと、人間でも内蔵には意識が及ばないこと、血液の循環にも胃腸の消化活動にも意識は全く関与していないこと。まず身体があるの

    山崎正和『世界文明史の試み』の書評から - mmpoloの日記
  • 佐野眞一『昭和の終わりと黄昏ニッポン』を興味深く読んだ - mmpoloの日記

    佐野眞一『昭和の終わりと黄昏ニッポン』(文春文庫)を興味深く読んだ。佐野眞一のはハズレがない。書は昭和天皇が亡くなる前後の出来事を前半に置いて、後半は平成に入ってからの事件や出来事を紹介している。前半の「昭和が終わった日」と後半「平成不況を歩く」の合に多少無理があるが、面白さは損なわれていない。 その「平成不況を歩く」は、「ルポ 下層社会」「ドバイの百円ショップ」「山谷・沖縄・竹ノ塚 貧困の三都物語」「自殺大国ニッポンの正体」「医療崩壊時代の名医たち」から構成されている。 下層社会では足立区が取り上げられる。足立区の就学援助率は2004年で42.5%だという。その反対が千代田区で6.7%しかない。足立区の教師が言う。 「……足立区は小学校から学校選択制を導入しています。当然、人気校というものが出てくる。ところが低所得者層が多く居住する地域から、人気校に通える子どもはほとんどいません。

    佐野眞一『昭和の終わりと黄昏ニッポン』を興味深く読んだ - mmpoloの日記
  • 吉田茂について知りたくて - mmpoloの日記

    毎日新聞8月9日の読書欄に「終戦記念日特集」として五百旗頭真が「戦争」と「昭和」をテーマに何冊かを推薦している。まず半藤一利「昭和史」(平凡社ライブラリー)を挙げているがこのは面白い。私に言わせれば密室史観あるいは料亭史観ともいうべき政治の黒幕を重視した歴史観で、面白いはずだ。ついで服部龍二「広田弘毅」(中公新書)が推薦され、城山三郎の「落日燃ゆ」で美化された姿にくらべて「立派な政治家とは言い難い像が描き出されている」とずいぶん控えめに書いている。3冊目が「近衛文麿」だ。 今年最大の収穫は、筒井清忠「近衛文麿」(岩波現代文庫)である。(中略)筒井著は学者による初めての格的な近衛伝といえよう。高貴な生れにして、類まれなインテリ教養人である近衛は、絶大な国民的喝采を受けて首相に就任する。(中略)日中戦争や三国同盟、そして対米戦争をめぐる近衛の姿勢の微妙な変化を、書は宮中、軍部や国民世論と

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  • 「悩みのるつぼ」でどうしたらモテるかを答える岡田斗司夫 - mmpoloの日記

    「悩みのるつぼ」で、33歳会社員の女性がどうしたらモテるか相談している。(朝日新聞2010年1月23日)まずその相談から。 客観的に見て、私は容姿もかなりのレベルだと思うのですが、全然モテません。(中略) 20代で別れた男性に昔、「君はスキがない、なんとなくかわいくない」と言われました。 そのことがずっと気になり、考えてきましたが、「スキがある」とは結局、「すぐセックスできそうな雰囲気がある」ということではないかと思えてなりません。そういう人なら、男性も、恋人にするには心配で、遊び相手として軽くみるのではと思うのですが、周囲を見渡すと、そういう女性が現実にはモテて、結婚して幸せそうだし、しかも、既婚なのにまだモテていて、正直、悔しいです。 「スキがある」とは、フェロモンですか? 天性のものですか? スキがない女に恋愛はできませんか? 岡田斗司夫が答えている。これが秀逸だ。 「スキってなに?

    「悩みのるつぼ」でどうしたらモテるかを答える岡田斗司夫 - mmpoloの日記
  • 「日本人の知らない日本語」が面白い - mmpoloの日記

    蛇蔵&海野凪子「日人の知らない日語」(メディアファクトリー)が52万部突破だという。日語学校の先生vs外国人学生の笑える日語バトルと帯の惹句にある。新聞の広告に紹介されているページが秀逸。 先生 敬語について質問が 「教えて頂けますか」と「教えて下さいませんか」の違いを教えて下さい 教えてもらえる権利の度合いが違います 〈教えてもらえる権利〉 (高)教えて頂けますか? (低)教えて下さいませんか? よくわかりました では「さしつかえなければ」と「おそれいりますが」の使い分けを教えて下さい それは相手に断る余地をどれくらい与えるかの違いです 〈相手の断る権利〉 (低)おそれいりますが(へりくだっているがある程度強制力がある) (高)さしつかえなければ(相手は断ってもいい) いや知らなかった。教わることが多い。 花札の梅に短冊の「あのよろし」って「あかよろし」と読むなんて知らなかった。

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  • 田中克彦「ノモンハン戦争」(岩波新書) - mmpoloの日記

    新聞に載っている岩波書店の今月の新刊の広告に、岩波新書で「ノモンハン戦争」というのがあった。あれってノモンハン事件じゃなかったっけ、くらいに思ったがとりたてて読みたいとは思わなかった。でも一応著者を確認したら田中克彦だった。モンゴル語が専門の言語学者で、田中のどのも興味深く読んできた。ほとんどすべての著書を読んできただろう。そういう著者は、ほかにスパイ小説のジョン・ル・カレ、ポーランドのSF作家のスタニスワフ・レム、作家の金井美恵子、画家でエッセイストの野見山暁治など数える程度だ。 仮にノモンハンだって、田中克彦が書いているのなら読むに決まっている。そしたら、朝日新聞の6月25日夕刊に「ノモンハン戦争とは何だったのか、奪われた民族統合の夢」と題された田中克彦の署名原稿が掲載された。 ここに1枚の写真がある。左に見えるのは満洲国の、右はモンゴル人民共和国の国旗である。撮影された日付は、19

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  • 半藤一利の「昭和史」 - mmpoloの日記

    半藤一利の「昭和史」シリーズが面白い。この面白さは司馬遼太郎の歴史小説の面白さと共通している。それは何か。 加藤周一が司馬遼太郎の歴史小説について、英雄史観だと批判した。英雄が歴史を作っていくという考え方。それに倣って言えば半藤一利は陰謀史観だろう。元老や政治の黒幕たちが密室などで話し合って歴史を作っていく。話として面白いはずだ。そして両者に欠けているのが社会情勢やマルクスの下部構造の考え方だ。 昭和史 1926-1945 作者: 半藤一利出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2004/02/11メディア: 単行購入: 3人 クリック: 30回この商品を含むブログ (99件) を見る昭和史 〈戦後篇〉 1945-1989 作者: 半藤一利出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2006/04/11メディア: 単行購入: 3人 クリック: 11回この商品を含むブログ (30件) を見る

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  • 「日米同盟の正体」から教えられたこと - mmpoloの日記

    「日米同盟の正体」の著者は最近まで防衛大学の教授だった人。長く外務省に勤め、外交官や国際情報局長を歴任している。吉田茂や猪木正道を高く評価している。 孫崎は日には戦略思考が皆無だと批判する。例えば、「多くの日人は、(1,000カイリの)シーレーン防衛構想によって対潜水艦哨戒機Pー3Cを保有したのは、石油を主体とする補給海路の確保のためであると理解している。だがそれは間違っている。」 鈴木善幸総理が1,000カイリのシーレーンの防衛を宣言したとき、鈴木自身はおそらく自分の言った言葉の意味を十分に咀嚼していなかったと孫崎は書く。シーレーン防衛構想というのは、中東に石油を依存する日の海上補給路がソ連の潜水艦攻撃に襲われる恐れがある、海上補給路を確保するために日はPー3C対潜水艦哨戒機を大量に保有するという政策だ。この距離はオホーツク海のソ連海軍力を封じ込めるに十分だった。オホーツク海のソ

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  • 岩坪賢の初個展がすばらしい - mmpoloの日記

    画の岩坪賢の初個展がすばらしい。中央区京橋のアートスペース羅針盤で2月14日まで開かれている。左右2メートル前後の大作に、若い娘たちの眠っていたりくつろいでいる姿を描いている。画面には2、3人の娘たちが描かれているが、彼女たちがいる空間は微妙にずれていて、同一面に存在していない。不思議な空間構成となっている。それも大きな魅力だ。 いや最初に眼につくのは岩坪の絵の巧さだ。だが単に巧いだけではなく、不思議な画面を作っている。それが魅力なのだ。 画廊で配布しているカタログには内田あぐりの言葉が紹介されている。 いったい、彼女たちは何を思いながら其処にいるのだろうか。肉体の重さを持たずに、手足を投げ出しながら、彼方を見つめている。作者が描く女性たちは、表面的な美しさだけでなく、一人の人間としての内面性まで顕れている。若い感性が滲みでる、美しい絵画世界である。 岩坪賢は1980年大阪府生まれ。2

    岩坪賢の初個展がすばらしい - mmpoloの日記
  • 天袋の中のポルノ写真 - mmpoloの日記

    もう30年ばかり前のことになるが、北陸の県立農業試験場の研究者がポルノ写真をコレクションしていた。現在と違って当時そのような写真を入手するのは当に至難だった。たいていの人は一生に数枚程度しか見ることがなかっただろう。 しかしマニアはいるのである。その研究者はどのようにしてか、膨大なコレクションを持っていた。それらの写真を分類し、日人、レズ、ホモ、白人と白人、白人と黒人、黒人同士、動物と人間、SM、スカトロとか、そんな風に分類してアルバムに整理していた。そのアルバムを押入の天袋に大量に保管していた。それが彼の留守中奥さんに見つかり、何とその見事なコレクションをすべて焼却されてしまった。 彼が偉いのはこれからだ。仕方ない、また初めからやり直しだと言った。私はこのエピソードを鏡としている。ほとんどすべてを失って、しかし絶望することなく、怒ることもなく、淡々とポジティブに初めからやり直そうとい

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    aegis09
    aegis09 2009/02/15
    "仕方ない、また初めからやり直しだと言った。"←きっと戦後の焼け野原に復員してきた気持ちに通じる者があると思う。/いや、なんか違うような気も・・・
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