生まれた時から思っていた ―― ここで少し話題を変えて、石井さんがノンフィクション作家になるに至った読書体験などを伺えたらと思います。 石井ノンフィクション作家になろうとした理由を簡単に、ガンっと言えば、もともと、生まれた時から自分は何かをつくる人間だと思っていました。それ以外は考えたことなかったですね。ただ、機械は苦手だったのでカメラマンはダメだったし、詩人というタイプじゃないしね。絵が下手なので絵描きもない。音痴だから音楽家もない。だけど、おそらく物語をつくっていく人間になるということは生まれた瞬間から思っていたと思います。 『春琴抄』(谷崎潤一郎、新潮文庫) そこで、映画か、小説か、ノンフィクションか、と考えていたときに、ひとつきっかけとしてあるのが、谷崎潤一郎の『春琴抄』です。物語のなかで、佐助という奉公人が、幼い頃から付き添いをしていた春琴という女性のために、自分で自分の目ん玉を