先月の末ごろインフルエンザにかかってしまいました。20年以上発症していなかったので、ほんとうに久しぶりのインフルエンザ体験でした。 発熱がピークに達している最中はつらくて何もできませんでしたが、薬の作用で熱が下降状態に入ったとき(平熱までは戻っていないものの)退屈しのぎに本でも読みたくなりました。せっかくなので、身体が病的に熱を帯びたこの状態で読むからこそ特異な効果を得られそうな本を読みたい、と思いました。 かといって、あれこれ本を探索する余裕はなく、結局、寝床の近くに積んであった本の中から芥川龍之介の『地獄変』を手に取りました。この小説には、牛車の中の女が生きたまま焼き殺される炎熱シーンがあります。それが発熱でモウロウとした私の意識とどこかしらシンクロするのではないか…と少しだけ期待したのでした。 牛車もろとも若い女が焼き殺される場面は、まことにおぞましいです。そんなふうに生身の女が焼き