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ブックマーク / umiurimasu.exblog.jp (1)

  • 「八犬傳」(上・下) 山田風太郎 | 族長の初夏

    作家も人間なので、もてる時間は有限です。畢生の大作を書きあげてから死ぬ作家もいれば、不運にも道なかばで時間が尽きてしまう作家もいます。未完の原稿を抱えたまま、残り時間の少なさを自覚したとき、作家はみんな自問するかもしれません。というか、己に問わない作家はいないでしょう。「自分は何のために書くのか」と。 滝沢馬琴は膨大な日記を残していて、それによると彼の作家人生はお世辞にも幸福とは言いがたいものだったようです。意にそまぬ戯作の仕事人生の大半を費やし、息子を早く亡くし、暖かい家庭も、金銭的余裕も、日々の楽しみをわかちあう知己もなく、失明した後は息子のの手を借りた口述筆記による執筆の日々。「南総里見八犬伝」はそうした不断の苦しみの果てに書きあげられたものでした。そうまでして、そこまでして、なぜ彼は書くのをやめなかったのか。この苦しみの中に、しかし馬琴ははじめて、自分が「八犬傳」をかきつづける

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