歌人の与謝野晶子(1878~1942年)が、大正から昭和初期に、百貨店の顧客向け冊子に寄せた短歌、約450首が確認された。歌集や全集には収録されておらず、研究者は「古典的な趣味を取り入れた巧みな歌も見られ、価値の高い資料だ」としている。 高島屋史料館(大阪市浪速区)に残っていた資料を元社員の表田(おもてだ)治郎さん(73)が数十年かけ調べた。 晶子は1918年から「百選会」と呼ばれる着物の新作発表会の相談役に就いた。94年まで続いた同百貨店の名物企画で、依頼を受けた多くの文化人が協力した。 晶子は40年まで、業者が新作を競い合う季節ごとの審査会にほぼ毎回出席し、その時得た印象や、着物の特徴を織り込んだ歌を多いときには30首ほど詠んで、冊子や客向けの案内状で発表したという。 宣伝色が濃いと本人が判断したためか、全集などには見られず、研究者も存在だけは確認していたが、注目されることがなかった。