こんな夢を見た。 起伏の激しい海沿いの道路をどこまでも走ってゆくと、左手に目的地が見えてきた。 舗装道路から外れ、45度近い急角度のトンネルを転げるようにして下った先の浜辺に、断崖の壁面にへばりつくようにして建てられた奇妙な形の建物があった。どう見ても農場のようには見えない。 玄関の引き戸をがらがら開けると、中は新しいが質素な和風の木造建築で、なにか寺院のような雰囲気だった。呼びかけても返事がないので勝手に靴を脱いで上がりこむ。建物は横に長い造りになっており、周囲の様子を伺いながら赤いじゅうたんの敷かれた廊下を静かに歩くと、ひとつの部屋の古風なガラス戸越しに人影が見えた。 思い切って中を覗くとそこは大きな台所で、洗い場の前でひとりの男がうがいをしていた。 「あの…」背中に呼びかけてみる。振り向いた男は初老で、坊主頭に作務衣を着ており、酪農家というよりは僧侶のようないでたちだった。施設を見学