第167回 『助けてと言えない』。の巻 最近、深く考えさせられる本を読み、とても一人では抱えきれないのでみんなにも共有、というか無理矢理感染させたいと思う。 その本とは『助けてと言えない いま30代に何が』(文藝春秋 NHKクローズアップ現代取材班)。この連載の132回でも触れたNHKの同名の番組が書籍化されたものだ。 09年4月、北九州市で39歳の男性が孤独死(死因は餓死とみられている)しているのが発見されたことから取材が始まったこの番組の第一回を私は見ていない。この本で詳細を初めて知ったのだが、男性の経歴は、現在の30代にとってまったく珍しいものではなかったことに改めて衝撃を受けた。 ざっくり振り返ると、69年生まれの男性は20歳で専門学校を卒業した90年に金融関係の会社に正社員として入社。時代はまだバブルだ。が、過酷な勤務から体調を崩し、退職。しかし、その頃は既にバブルがはじけたあと