元の侵攻に対して日本が勝ったのは、「神風」が吹いたためだとの伝説が鎌倉時代に生まれた。この伝説は、やがて20世紀に日本が太平洋戦争に突入した際に、国威発揚に利用され、「不敗神話」をもたらした。そして日本国民に無謀な戦いを強いる結果となった。 池の分厚い堆積層 元による日本侵攻時、実際に台風などで暴風が吹き荒れたのかどうか。この問いに対して、地質学の側面からアプローチした興味深い研究がある。 原口強・東北大学特任教授(当時は大阪市立大学准教授)の研究グループは2016年、熊本県・天草半島にある1周800メートルの淡水池「天草大蛇池(池田池)」湖底の地層調査を行った。東日本大震災を受けて、全国各地で池の地層から津波履歴を洗い直す調査の一環だった。 天草大蛇池(中央)は海岸(右)とほぼ接している(熊本県天草市文化課提供) その結果、湖底から1.28メートル地下に63センチもの分厚い堆積層があるこ