結局、何がどうすごいのか? 南方熊楠という人は、とてもわかりにくい存在である。 その名は有名であるが、「何をした人なのか」というのがいまいち、わかりにくい。 講談社現代新書『未完の天才 南方熊楠』(志村真幸・著)は、その「なぜわかりにくいのか」に迫っておもしろい。 わかりにくさの原因を知るだけで、南方熊楠が近くに感じられる。 南方熊楠の形容は「知の巨人」と紹介されることが多い。 すごい人だ、という意味だが、かなり漠然としている。 何がどうすごいのかはなかなか説明されない。 南方熊楠は博覧強記の人として知られている。何か国語も操り、海外の雑誌にも論文をいくつも掲載された研究者である。 知の巨人というイメージは明治時代からあり、「海外から高く評価されている日本の学者」というのが世間一般での理解であったようだ。 博覧強記ということは、つまり「知識のインプット」に対して異様な熱量を持っていたという