著者(ジェラルド・カーティス)はRIETIの客員研究員だったので、何度か話したことがある。本書のタイトルからもわかるように日本が好きで、日本語は完璧だった。「中選挙区制はワークしていた。それを壊した日本は、しばらく混沌とした状況が続くだろう」というのが彼の予想だった。たしかに、かつては官僚が政策を立案し、自民党の派閥が利害調整を行ない、「国対政治」で野党の主張も取り入れる非公式の調整メカニズムが、それなりにワークしていた。 しかし、この安定したシステムで甘やかされた万年野党が政策の競争をなくし、利益集団にバラマキを行なう政治が続いてきた。1993年に小沢一郎氏が仕掛けた政治改革の目的は社会党をつぶすことであり、その点では成功したと私は思うが、その後15年も混乱が続いているのは、著者の指摘した通りだ。その根本的な原因は、伝統的な調整メカニズムが崩壊したのに、それに代わるメカニズムができてい