二階より地のひるがおを吹く友や 二階の窓から顔を出し、地べたに咲く昼顔に向かってフーッと息を吹きかけようとする。そんな奇妙なことをする「友」とはどんな人でしょうか。そのあたりは読者が自由に想像すればよい。昼顔の咲く、明るい陽光の中の白昼夢のようなイメージを描出した作品です。作者は1月14日、85歳で亡くなった俳人の安井浩司。能代市出身で長く秋田市に住んでいました。今回は特別編として安井の作品を紹介します。 悲しみの多足の蟲が夕空に 「多足の蟲(むし)」とは多足類でしょうか。すなわちムカデ、ヤスデなど。そんな生きものが「夕空」にいる。そう思ったとき、この句はすでに幻想の領域に入っています。私はシュールレアリズム風のイメージを思い浮かべました。ムカデのような影が、黒い染みのように、日暮の空に滲(にじ)んでいる。では「悲しみ」とは何でしょうか。夕空に浮かぶ不吉なシルエットは、人類の背負った「悲し
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