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ブックマーク / marginaliae.wordpress.com (9)

  • 宇宙の缶詰め

    クリストの梱包芸術 1)「梱包芸術」というジャンルがある。第一人者としてはブルガリア出身のアーティスト、クリストとそのパートナー、ジャーヌ=クロードが有名だ。ともかく何でも梱包してしまうというのがコンセプトで、古くは1969年にオーストラリアで「海岸を梱包」して世間の度肝を抜いた。また1985年にはパリの「ポン・ヌフ」を梱包した。ベルリンのライヒスターク(帝国議会議事堂)を梱包したこともある。 小さなところではスヌーピーの小屋が梱包されたこともあった。 (Peanuts 1978/11/20 ワシントンポスト他各紙;画像参照元は Peanuts オフィシャルサイト) その輝かしい戦歴をグーグルのイメージ検索でどうぞ: 梱包対象のインフレーション 基的には、ともかくどでかいものを梱包することがライフワークの人で(そう言われると心外だそうだが傍目から見れば明らかに)、芸術批評界でも美術愛好家

    宇宙の缶詰め
  • 将棋指しが飯を食う

    将棋の話——いや飯(めし)の話かな。 登場する人物はぜんいん偉人枠につき、以下しばしば敬称略、また段位冠位は執筆時。 順位戦では飯をう 名人位への挑戦権を争う順位戦は持ち時間6時間の長丁場だ。これより長い持ち時間の棋戦(たとえば名人戦、竜王戦などの番勝負)は二日制になるので、この順位戦が一日連続の対局時間としては最長の棋戦ということになる。朝始まって日付が変わるまで対戦が続くのが普通で、最高A級リーグ戦の最終二局はリーグ参加者が全員同日に熱戦を繰り広げる。とくに三月初旬、東京の将棋会館に集まって行われるA級最終局(9回戦)の日を「将棋界の一番長い日」などと言い習わしている。 各自6時間の持ち時間だから二人で12時間の考慮時間が用意されている、しかしそれを使い切っても「一分将棋」でまだ対局は続く。大変な話だ。 だいたい人というものは一つことを一時間と考え続けていられないものではないだろうか

    将棋指しが飯を食う
  • 英仏間の二重語、再会する生き別れの兄弟

    このように語彙の二層化が生じると、いきおい人は両者にニュアンス付けをして微妙に「使い分けていく」ようになる。一方が日常語になり、他方が学術語 (mot savant) になったりすることも多い。例えば buy と perchase などでは、訳し分けるなら「買う」と「購入する」と言ったようなニュアンスの差違が生じている。ここではゲルマン諸語系の語彙の方が日常化して、他方を「より専門語的」に仕上げたわけだ。生存競争(使用頻度)から言えば buy の圧勝だろう。 語彙流入の経緯からしても、後発のロマンス諸語系の語彙が学術語を受けもつ傾向が大きいのは事実であるが、もちろん逆の場合だってある。blossom と flower のペア、behaviour と action のペアでは後者のロマンス諸語系語彙の方が日常的になった。これらでは後者が生存戦略上圧勝している。 mistake と error

    英仏間の二重語、再会する生き別れの兄弟
  • エゴサ

    エゴサの意味が変わりつつあるという。Twitter で「を/でエゴサ」を検索してみよう: この時間に「なう」でエゴサしてふぁぼってくるアカウントなにもんや 4年前声優になると豪語していたN君は元気だろうか、彼の名前をエゴサしても引っかからないのはきっと芸名使ってるからだよねそうだよね(棒読み 彼の名前をエゴサしたら「[彼の名前]ならアマゾン」という人身売買をしている脅威のアマゾン先生が垣間見えた 月曜から夜ふかしに出ていた地下アイドルの名前をエゴサしているんだが分からない(>_<) 知っている人教えてくらはい(^-^) 大嫌いなツイッタラーの名前をエゴサして、俺より潤ってないのを見て鼻で笑うのが楽しくてしゃーないわ!!! 1日に何度か好きな絵師さんの名前をエゴサして監視してる あきらかに自分以外のものを「エゴサ」する動きが始まっているのである。エゴ・サーチが省略されてエゴサになり、さらに「

    エゴサ
  • うなぎ文の一般言語学

    これは以前のエントリー「ウナギ文の好例コレクション(リンク)」の補遺として書かれ始めたものだった。そのエントリーに追補しようと考えていたのだが、この「追補」の方が体より長くなってしまう勢いである。これは別エントリーにするに如くはないと考えた。 以下に新たな例を付け加えるとともに、いわゆる「うなぎ文」の問題圏から、「名詞文」の問題、さらにはドイツ語・ラテン語の非人称受動の問題、フランス語の代名動詞の問題まで、一般言語学的に話を拡げていく。というか、書いてみたら勝手にそこまで話が及んでしまった。 奥津講演 まず実例の追補として、次の講演に魅力的な例を多く見いだした。つまみいにするのはおしい充実した記事であるから、諸賢は原文にあたられたい、すべてリンクを張っておく。以下原則敬称略とする。 奥津敬一郎「言語における普遍と特殊-うなぎ文をめぐって-」2007年度 第1回日語特別講演会:報告(活

    うなぎ文の一般言語学
  • 開発者名を冠した新案器具

    医療器具(手術用具)のカタログに見た 手術用クリップのトップメーカーとして業界に知られる「ミズホ株式会社」というメーカーがある。経済産業省の認定によれば規模は中小ながら、脳動脈瘤手術用の「杉田クリップ」の生産で脳外科医の間で世に欠くべからざるプレゼンスを誇っている会社であり、経産省の「グローバルニッチトップ企業100選」にもノミネートされている。 同社ウェブサイトのカタログを覗こうとすると「あなたは医者ですか」と訊いてくる。正直に「いえ、しがない物書きで……」などと答えると、カタログではなくトップ頁に飛ばされてしまうのだ。門前払いである。「どういうお店か、確かめてから入ってきてね」という具合。あなたの来るところじゃないから…… 完全に一見さんお断り、というか「お医者さん以外お断り」というかんじで、そりゃそうだミズホはプロ相手の特殊な商売である、物見遊山で来られても困るといった態度が実直な感

    開発者名を冠した新案器具
  • クールな「紙名」を誇る業界紙の世界

    ニッチな新聞というものがある。業界紙などと呼ばれる特殊業界御用達の新聞である。 そういう業界紙のなかに、門外漢の立場からするとはっとするような名前の新聞がある。 たとえば自動車産業の市場規模を考えた場合『日刊自動車新聞』(紙面をご覧下さい)というものがあっても誰も驚かないだろうが…… いやそれどころか『二輪車新聞』(紙面をご覧下さい)というものがあってもまだ驚かないだろうが…… 『自動車タイヤ新聞』(これは是非、その紙面をご覧になって頂きたい)——タイヤ情報に特化した新聞が存在することを知ったならば多くのひとが驚くのではないだろうか。 また『日刊不動産経済通信』という新聞があっても、市場動向というものが莫大な損益を日々生み出している業界の事情を考えれば、こうした専門紙の必要性は判る。 だが……『日屋根経済新聞』(これも是非、紙面をご覧になって頂きたい)という新聞の存在を知ると、随分ニッチ

    クールな「紙名」を誇る業界紙の世界
  • 「汚名挽回」は誤用か否か

    twitter で「汚名挽回」の名誉回復が論じられている。 誤用ではない?「汚名挽回」「名誉挽回」をめぐる辞書編纂者らの議論 辞書編纂者の方々は文証が多ければ、誤用か否かとは別に「現に用いられる」という理由でまずは用例として取り上げざるをえまいし、そこに誤用であるか否かの判断が必要ならしかるべき基準のもとに判断を下すだろう。以下、手許のカードから。大御所、ベテランから最近のものまで、わりと用例はある: 片山旅団に任務交替の日まで、支隊は九七〇を固守、汚名挽回に努めた。(五味川純平『ノモンハン』下) 田中参謀は、俄かに活気を取り戻した。西安の兵変を汚名挽回の好機として勇み立ったのである。(五味川純平『虚構の大義—関東軍私記—) 警視庁は非難されていたが、これでなんとか表向きは汚名挽回ができた。(勝田龍夫『重臣たちの昭和史』上) 漢中から無念の退却をした徐晃は、汚名挽回の好機とばかり、まっしぐ

    「汚名挽回」は誤用か否か
  • 外国小説や映画に出てくる奇妙な名前の日本人

    外国人にとってはまだまだ日は未知の国、外国の小説漫画映画などに出てくる日人の姓名が時としてかなりヘンテコなものになっていることがある。ずっとコレクションしているのだが、ここに一端を御蔵出しする。 ※小文に限っては、簡便のため姓名の「名字(ファミリーネーム)」と「名前(個人名=ファーストネーム)」を常時区別し、単に「名前」とした場合でも、それはファーストネームの方を意味することとする。 まずは良い例から 無論、ヘンテコなものばかりではない、割に穏当なものも多いのだ。たとえば御大、エラリークイーン『ニッポン樫鳥の謎』(創元版)=『日庭園殺人事件』(角川版)に出てくる寡黙な日人老女中、その名は: キヌメ カタカナで書かれるとぎょっとするが、これは「絹女」とでも書くのだろうか、彼女は琉球の出身で、琉球はアイヌとも血統が近いと言われているが、戦前のものにしては割に正しい認識と言ってよかろ

    外国小説や映画に出てくる奇妙な名前の日本人
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