わたしは団鬼六に会ったことがない。それを言うなら、恥ずかしながら、『花と蛇』を代表作とするSM小説も読んだことがない。それではたしてこの解説を書く資格があるのかどうか、大いに疑問だと言わざるをえないが、それでも将棋というささやかな一点で間接的なつながりがあるので、それだけをたよりに書いてみようと思う。 団鬼六が初めてわたしの視界に入ったのは、本書にも出てくる、今は亡き将棋雑誌『将棋ジャーナル』で、プロアマのお好み対局として団鬼六が登場したときだったと思う。手元にその雑誌がないので、くわしいことは記憶していない。相手のプロは誰だったか(現役を退いた棋士だったような気がするが、自信はない)、手合いは飛落ちか角落ちか、すっかり忘れている。しかし、たったひとつ記憶しているのは、その棋譜を並べてみて、団鬼六が予想以上に指せる、と感心したことだ。勉強しておぼえたという将棋ではない。いわば身体でおぼえた
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