二〇二〇年十二月十八日、シェイクスピアの喜劇『終わりよければすべてよし』を訳了した。 振り返れば、『終わりよければ』を先頭に「前へならえ」のかたちでシェイクスピアの戯曲三十七本がずらっと一列に並んでいる。一番遠くに立つのは一九九三年に訳した『間違いの喜劇』だ。各作品それぞれに拙訳を使って上演された様々な舞台が寄り添っている。 振り返れば二十八年経っている。その歳月の道筋のそこかしこに、私をここまで連れてきてくれたあの人この人の顔が――。 一九九三年まで、私はシェイクスピアから逃げまくっていた。逃げたつもりでいると、その都度シェイクスピアに通せんぼされた。通せんぼの大半に『夏の夜の夢』がからんでいる。 最初の逃走と通せんぼ。大学二年で英文科に進んだ私は、英文学専攻なのだから卒業までにシェイクスピアの一本も読んでおかねばと殊勝な気を起こし、シェイクスピア研究会というサークルをのぞいてみた。先輩