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ブックマーク / www.medieviste.org (4)

  • 美術史家のギロチン考

    またまたダニエル・アラスの著作から、『ギロチンと恐怖の想像領域』(Daniel Arasse, La guillotine et l’imaginaire de la Terreur, Flammarion, 1987-2010)を読んでいるところ。まだほぼ前半。タイトルの通り、これはギロチンにまつわる表象史の試み。罪人の処刑方法(斬首や八つ裂きなど)が残忍だとされた18世紀に、もっとスピーディに苦痛もなく処刑ができる方法として考案されたのがギロチンで、提唱者のギヨタンはその「人道的」な面を強調していた。装置の原型はもっと古いようで、15世紀から16世紀のイタリアにはその古形があったというし、12〜13世紀のナポリほかに同じような装置があったとも言われる。けれどもやはり面白いのは、当初唱えられた人道性に反して、ギロチンが恐怖の対象となっていったその有様だ。処刑のあまりの迅速さや、斬首後に首

    美術史家のギロチン考
  • 人は敵を愛せるか

    キリスト教の伝統的な教えとして広く流布しているものの一つに、「汝の敵を愛せ」というのがある。けれどもこれはそう簡単なことではないように見える。これについて、トマス・アクィナスの応答を紹介した論考を見かけたので、取り上げておくことにしよう。ベレク・キナ・スミス「敵は友になりうるか?トマス的回答」(Berek Qinah Simith, Can an Enemy be a Friend? A Thomastic Reply, Patristics, Medieval, and Renaissance Conference, Villanova University, October 25, 2014)。これによると、A.C.グレイリングという英国の哲学者が近年の著作でその問題を扱っていて、敵を愛するという命題が結局は詭弁にしかならないことを示してみせたのだという。これを受ける形で、同論考はペト

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  • 「心理学」と「存在論」−−その名称的来歴

    マルコ・ラマンナ「心理学の初期の来歴について」(Marco Lamanna, On the Early History of Psychology, Revista Filosófica de Coimbra, no. 38, 2010)(PDFはこちら)という論文を読んだ。中世まで霊魂論として受け継がれてきた魂に関する学知が、「心理学」(psychology)という名称に格的に置き換わったのは16世紀末から17世紀初めということだが、同論考はその成立と普及について考察したもの。合わせてほぼ同時期に登場する「存在論」(ontology)の来歴にも触れている。実はこの「心理学」、現在確認されている最も早い例は、16世紀初めに活躍したクロアチアの人文主義者、マルコ・マルリッチの著書(Psichologia de ratione animae humanae: 1520年頃)なのだという。ただ

    「心理学」と「存在論」−−その名称的来歴
  • 魔術師のジェンダー化問題

    近代初期を中心に盛んになった魔女裁判。ちょうどこちらのブログ「オシテオサレテ」でも取り上げられていたのだけれど、魔術・魔術師の糾弾として始まったはずの教会の動きがいかにして「魔女」裁判になったのかはとても興味あるところ。というわけで、先に別方面で紹介されていた論考を読んでみた。マチュー・アレクサンダー・メビウス「魔術についての聖職者の理解と魔女のステレオタイプ」というもの(Mathew Alexander Moebius, Clerical Conceptions of Magic and the Stereotype of the Female Witch, Oshkosh Scholar, vol.6, 2011)で、魔術師のジェンダー化問題について様々な文献をプロットし、それがどう導かれたか描こうとする野心的な(?)一編。さっそく内容をまとめよう。もともと広義の魔術・妖術は古代から民

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