東京に暮らす25歳のアロンゾは、日本人と黒人の親のもとに生まれた。休暇のさいに家族と米国で過ごすことはあっても、人生の大半を生きてきたのは日本だ。単一民族が圧倒的多数を占める国で〈ハーフ〉として育った彼は、これまで外国人として扱われ続けてきた。いくら流暢に日本語が喋れても意味がない。ジョージ・フロイドの死亡事件を契機としてブラック・ライブス・マター(BLM)運動が高まった今、彼は西洋世界が変化していくことを、慎重姿勢を保ちながらも期待の目で見つめている。一方、彼自身が暮らす日本は、人種差別が無くなる可能性など微塵も感じられない状態だ。 ──日本のBLM運動において、この1年で起きたいちばんの変化は何でしょう。 アロンゾ:正直なところ、日本では何も変わっていないと思います。むしろ悪化していると言えるかもしれない。最近では、IOCが選手による抗議行動の禁止を正式に発表し、アスリートたちは〈BL
日本では週60時間の勤務は当たり前。勤勉を重んじる文化は今に始まったことではないが、特に顕著になったのは第二次世界大戦後だ。当時の吉田茂首相は、経済復興のため、企業の長時間労働を推奨した。それから数十年後経った今も、激務や禁欲主義を良しとする風潮は、根強く残っている。 日本の平均的なサラリーマンの労働観は、危険なほど不健全だ。過労による心不全の発症率、自殺率はいずれも非常に高く、政府は、休暇を取りやすくするための試みを何度も行なってきた。 過労が日本の労働者に与える影響を探るのに、念入りな調査は必要ない。写真家のパヴェウ・ヤシュチュク(Pawel Jaszczuk)によると、勤務時間後に街を歩きさえすればいいという。ポーランド出身のパヴェウは、東京で数年間生活するなかで、路上で眠る疲れ果てたサラリーマンを撮り続けてきた。そんな彼に、作品に込められたテーマ、被写体を搾取しているともいえる撮影
先日、ある出版社から筆者(御取引先様)のもとに「暴力団等排除に関する誓約書」という紙が送られてきた。暴力団員、準構成員その他これらに準ずる者に該当しないこと、これらの者と密接な関わりを有していないことを表明し保証せよ、とのこと。ほかにもあるが、違反すると契約の全部または一部を解除するそうだ。親兄弟、親戚、友人などにヤクザがいたら、その会社とは仕事ができない。いつの間にか出版社が警察の手先のようなことを、さもそれが当然のように言う時代になってしまった。暴力団排除条例施行後のがんじがらめな現在を、ヤクザだけの問題とせず、自らのこととして考えるきっかけとしたい。 『ヤクザと憲法』──。東海テレビの取材班が大阪の二代目東組二代目清勇会に密着。40分テープ500本におよぶ映像素材から72分に編集された本作は2015年3月30日夜に放映された。そこに描かれていたのは、生活者としてのヤクザたちのあまりに
『ヤクザと憲法』──。東海テレビの取材班が大阪の二代目東組二代目清勇会に密着。40分テープ500本におよぶ映像素材から72分に編集された本作は2015年3月30日夜に放映された。そこに描かれていたのは、生活者としてのヤクザたちのあまりにリアルな日常だった。 東海テレビの取材班が大阪の二代目東組二代目清勇会に密着。40分テープ500本におよぶ映像素材から72分に編集されたドキュメンタリー『ヤクザと憲法』が、2015年3月30日夜に放映された。そこに描かれていたのは、生活者としてのヤクザたちのあまりにリアルな日常だった。 中京エリアのローカル放送ながら、さまざまな手段を使って視聴した人々の評判が全国規模に拡大、噂が噂を呼び劇場公開が待望されていた。 今回、96分に再編集した劇場公開版の上映に先立ち、プロデューサーの阿武野勝彦氏にインタビュー。企画の立ち上げから公開に至るまでの秘話を語るその言葉
1980年代末、アパルトヘイト時代の南アフリカ共和国。都市部のゲットーでは、欧米からの影響で、ハウス・ミュージックがポピュラーな存在として定着していた。そこから発展して生まれたのが、「KWAITO(クワイト)」。テンポを落とし、ズールー語やスラングのチャント、そしてパーカッションからピアノなどを取り入れたアフロ・ハウスで、これを機に南アフリカのクラブ〜エレクトロニックミュージックは、独自の世界を生み出して行く。欧米のそれとは明らかに異なり、進化し続ける南アフリカ電子音楽シーン。各都市、各ジャンルを代表するアーティスト、プロデューサー、DJを訪れ、南アフリカ産エレクトロニックミュージックの今を三回に渡りレポートする。 第一回は、ダーバン、ヨハネスブルグ編。ディープなアンダーグラウンドハウス「GQOM」や、伝統的な民族音楽とミニマル・テクノをミックス&高速化させた「シャンガーン・エレクトロ(S
特殊詐欺の被害総額は、警察が把握しているだけで559億円(2014年)。そして今日も、持てる者たちから持たざる者たちが奪い取っていく。加害者への取材を通してこの重犯罪の実態に迫ったルポ『老人喰い ─高齢者を狙う詐欺の正体』を上梓した鈴木大介にインタビュー。振り込め詐欺をシノギとする若者たちの生態や心情から、アウトローを取材する記者稼業の本音にまで話が及んだ。 * 取材を始めたキッカケは、純粋に需要があったからです。いまに始まったことではなく、さまざまな社会の裏側の仕事というものは、生活に不安を感じている人々にとって「どうにもならなくなっても、こうすれば生きていけるんだ」といったガイドラインのような需要がありますから。 ところが、実際に取材をして、裏稼業の現場の子たちの話を聞いていくうちに、大きな違和感を感じたんですね。彼らは見た目こそ近寄りがたい存在なワケですが、実はその多くが社会的弱者で
第一作目である『マッドマックス』から36年、そして前作『マッドマックス/サンダードーム』から27年。遂に公開されたシリーズ第四作『マッドマックス/怒りのデス・ロード』。制作までの背景から、撮影中の逸話、出演者への想い、そしてこれからの映像表現について、ジョージ・ミラー監督が語る。 原題:VICE TALKS FILMS : George Miller みなさん、『マッドマックス/怒りのデス・ロード』はもうご覧になりましたでしょうか?私はまだですが、妻は興奮して帰って来ました。しかしパンフレットを買わなかったことを相当悔やんでいたらしく、結局次の日に四歳の子を連れてパンフレットだけを買いに行きました。もちろん子にはまだ見せられませんが、妻はパンフレットを指差しながら「イモータン・ジョー、イモータン・ジョー」と言っていました。 そんな「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、全世界で全人
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