2012年の末だったでしょうか、ひとりの老人が風呂敷包みを大事そうに抱えてやってきました。是松忍さんといい、元コニカの技術者だったそうで、風呂敷包みの中には写真化学の原典ともいわれたイーストマン・コダック社C.E.Kenneth Mees著の「From Dry Plate to Ektachrome Film --A Story of Photographic Research」という本の翻訳でした。たいへんきれいに整理されており、この翻訳を何とか本として出版したいという相談でした。僕は、出版から足を洗って早くも4年を過ぎようという時期でした。 ミース博士の写真技術の研究は、1961年にアメリカで発売され、副題に“乾板からエクタクロームまで”とあるように、当時の写真技術者にとってはまさにバイブルであったのです。是松さんの出版したいという熱意は素晴らしく、ちょっとした気迫を感じさせるものであ