2023年6月24日,私は石川県かほく市の高台にある西田幾多郎記念哲学館に行った。2023年度哲学講座「デカルトによる〈修練〉の哲学①――方法の精神を涵養する」を聴講するためである。 東京から北陸新幹線で金沢に行き,乗り継いで七尾線宇野気うのけで降りる。人通りのほとんどない静かな街を約20分歩く。梅雨の晴れ間,初夏の涼風と軒先に咲くあじさいに迎えられる。高台にある哲学館をめざして,小さな林の中の「思索の道」を登る。うっすらと汗がにじむ。このコースの仕掛け人は,哲学館を設計した安藤忠雄氏である。この様子は,本連載第172回に「哲学を学ぶ興奮」と題して書いた。4年経ってもその興奮は色あせていない。 市井の人たちと哲学する 今回の哲学はデカルト「方法序説」が中心であった。講師は津崎良典氏(筑波大学准教授)である。冒頭で浅見洋館長は,講師の略歴を紹介し,パリのパンテオン・ソルボンヌ大学で博士号を取
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