---------------- タバコの害についてこのごろ威丈高に言うものが増えたのは不愉快である。 いまタバコの害を言うものは、以前言わなかったものである。 いま言う害は全部以前からあったものである。 それなら少しはそのころ言うがいい。 当時何も言わないで、いま声高にいうのは便乗である。 人は便乗に際して言うときは声を大にする。 ことは正義は自分にあって相手にはないと思うと威丈高になる。 これはタバコの害の如きでさえ一人では言えないものが、いかに多いかを物語るものである。 ---------------- 震災以来、雨後の竹の子のように原発の害を口にする輩が出始めた。 以前から反原発を訴えていた者をそれまで誰も注目しなかったのに、二流雑誌はこぞってそういう者を使うようになった。 上に掲げたのは稀代の名コラムニストだった山本夏彦さんの文章だが、文中の「タバコ」を「原発」に換えるとそっくり