【小説】月をのむ 月を飲み込んだ。だから来てよ。 久々にかかってきた通話は、そこで切れてしまった。彼女はいつも、タイミングが悪い。連絡を寄越すのはだいたい深夜だし、ゼミに顔を出すのは決まって試験前だった。そして明日は、僕の引っ越しときている。 それでも僕はスクーターにまたがり、10キロ先の彼女のアパートを目指す。夜にぽつんと浮かぶ部屋の灯りを思い浮かべながら。頬にあたる風が冷たくて、数週間前まで側にあった夏が全部嘘みたいに思えた。 *** 「で、何を飲んだって?」 「満月。あたしのお腹
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【小説】月をのむ 月を飲み込んだ。だから来てよ。 久々にかかってきた通話は、そこで切れてしまった。彼女はいつも、タイミングが悪い。連絡を寄越すのはだいたい深夜だし、ゼミに顔を出すのは決まって試験前だった。そして明日は、僕の引っ越しときている。 それでも僕はスクーターにまたがり、10キロ先の彼女のアパートを目指す。夜にぽつんと浮かぶ部屋の灯りを思い浮かべながら。頬にあたる風が冷たくて、数週間前まで側にあった夏が全部嘘みたいに思えた。 *** 「で、何を飲んだって?」 「満月。あたしのお腹
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