物心ついた頃にはもう、聖堂で修業をさせられていた。 生まれつき高い資質を持つ私は、人生の選択肢を与えられることもなく、“聖女”となるべく育てられた。 聖女とは教団の顔。教団の謳(うた)う慈悲のシンボル。 それに相応しくあるようにと、所作のひとつに至るまで厳しく躾けられ、完璧に洗練された立ち居振る舞いを叩き込まれた。 誰もが黙って平伏(ひれふ)すような高貴な血を持たない私は、その存在自体で他者を圧倒するより他ない。 神に選ばれたとしか言いようのない高い神力、磨き抜かれた美貌、気品に満ちた言動……これらが合わさることにより、神の奇跡を体現する“聖女”という存在は出来上がる(・・・・・)。 皆は知らないだろう。 私という存在が、どれほどの努力と研鑽(けんさん)によって作られた(・・・・)ものなのかを。 持って生まれた神力は本物でも、その他の部分は人為的な造り物だ。 私には“自分”というものがほと