それは、高校卒業を間近に控えた、ある放課後のことだった。 たまたま、あるクラスメイトと、教室に二人きりになった。 それまで、ほとんど話したこともない相手だ。 だけどその時は何となく、どちらからともなく会話を始めていた。 あと少しすれば、もう毎日顔を合わせることもなくなる。 そんな、しんみりとした感傷(かんしょう)が、お互い、胸の底に湧(わ)いたのかも知れない。 「本当は、ずっと話してみたかったんだ」 彼女は、そう言った。 まるで、憧(あこが)れの相手に気後(きおく)れして、話しかけられなかったとでも言うように。 「いつも、すごいな……って、思って見てたんだ」 彼女は、私を褒(ほ)めちぎる。 自分の道を貫(つらぬ)く、クールなところが格好良(カッコイ)い。 早いうちから目標を決めて、ちゃんとそこへ向かっていけているのが、すごい。 それに比べて、自分は平凡で、目標も何も見えていなくて、恥ずかし