なんか“WHOは中国の言いなり”的な論調があちこちで見受けられますので、初歩的な話を一つ。 小松志朗准教授の「世界政府の感染症対策 ―人の移動をめぐる国境のジレンマ―」から。 このようにWHOと安保理という2つの主要な国際機構は、どちらも国境を閉ざすことに否定的である。それはつまり、グローバルな観点からは感染症対策において国境を閉ざすのは望ましくないということである。なぜそうなのかといえば、少なくとも3つの理由がある。第一に、国境を閉ざすことは感染症対策としてそれほど有効ではない。例えば、国境を閉ざす具体的な措置として比較的に穏健なタイプである検疫にしても、押谷が述べるように、日本にはSARSが入ってこなかったことや新型インフルエンザの被害が大きくなかったことから、ある種の「安全神話」が生まれているように思われるが、「航空網の発達した現代では、多くの感染症は、潜伏期間の間に日本に入国する可