野村克也がヤクルトの監督に就任したときは本当に驚いた。 「ノムさん、ユニフォームを着る気があったんだ!」と。1990年のことである。 スーパー解説者だったノムさん。テレビ朝日で解説する日はストライクゾーンを表示した画面がテレビに出現。次の球はここです、と野村克也が予想するとピッチャーの球は面白いようにそこに投げられた。バッターの結果も予想どおり。「野村スコープ」は野球の屁理屈の楽しさを教えてくれた。 となると当時10代の私は素朴な疑問としてこう思っていた。 「こんなに野球理論が凄い人なのに、なぜグランドに復帰しないのだろう?」 そんなある日、書店で「監督 その栄光と挫折」(日本スポーツ出版社)というタイトルを見つけた。野球雑誌『ホームラン』'89年1月15日発行号であった。 読みもののひとつに「球界のナゾ 野村克也はなぜユニホームを着ないのか?」が。これだ、自分が読みたかったのは! 永谷脩