イギリスがインド太平洋地域へ空母「クィーン・エリザベス」を派遣することが台頭する中国への牽制として、日本では歓迎されている。しかし、その報道は安全保障に焦点を当てた「敵か味方か」的なものが多く、したたかなイギリス外交に鑑みるとナィーブすぎるように思える。 イギリスが空母を遠路はるばる極東まで派遣するのは、言うまでもなく、自らの国益追求のためである。そして、イギリスは決して対中政策で旗幟を鮮明にした訳ではなく、経済と安全保障で二兎を追おうとしているのが現状である。 本稿では、欧州連合(EU)を離脱したイギリスが高々と掲げる「グローバル・ブリテン」(大英帝国の夢をもう一度!)推進の外交的ツールとして空母を活用するという実情とともに、欧米列強が19世紀にアジアで展開した砲艦外交を彷彿とさせる政策の実態は「張りぼて」ではないのかという点を指摘したい。 装備も人員も不足している 英海軍史上最強の空母