米東部ニューヨーク市クイーンズ地区。2020年12月22日朝、気温3度で冷たい風が吹く中、無料で食料を配る「フードバンク」が開かれるキリスト教会の前には、新型コロナウイルス感染拡大で職を失うなどした人たちの長い列ができていた。その先の角を曲がっても、次の角を曲がっても、手押し車や大きな袋を抱えた人の列が続く。2時間以上待っている人もいる。そこには、これまで食事に困ることのない生活を送っていた「中間層」の姿もあった。 午前10時、教会の支援団体「ボイシーズ・オブ・ハガー」のボランティアが黄色の袋に詰め込んだ食料を配り始めると、並んでいた人々は安堵(あんど)の表情を浮かべた。鶏肉や野菜、リンゴ、パスタや米、トマトソース。3人家族が3日間ほど暮らせる量だという。 「失業保険も切れる。もうプライドは捨てるしかない」 その列の中に、マンハッタンにある大手金融機関の社員用レストランでシェフをしていたウ