世界で最も危険な書物―グリモワールの歴史 [著]オーウェン・デイビーズ[掲載]2010年9月19日[評者]田中貴子(甲南大学教授・日本文学)■古代から現代へ魔術書の謎追う 夕暮れ方、ふと立ち寄った古書店の片隅で見つけた見慣れない本。開いてみると呪文らしきものや奇妙な図形が……。これはもしや魔術書ではないか。そう、世界中のすべてのことが叶(かな)うという書物だ。あなたはそれを買うだろうか。それともそっと元の場所へ戻すだろうか。 古来、人々は魔術や錬金術といったものに深い関心を示してきた。そして、古代から近代に至るまで、それらについて書かれた秘密の本があると伝えられた。その本はただ一冊ではなく、多くの「魔術師」によって書かれたとされる。 「ちちんぷいぷい」という日本人にはおなじみの呪文があるが、本当の由来はつきとめられていない。しかし、西洋には呪文を集めた魔術書が数えきれないほどあるのだ。 た