最近,取材先や友人と話していて,『ウェブ進化論』(梅田望夫著,ちくま新書)という本が話題にのぼることが何回か続いた。著者の梅田氏は,この本の中でリアルな世界を「こちら側」,バーチャルな世界を「あちら側」と規定したうえで,日本企業が強みを持っているものづくりを「こちら側」であるとし,「『こちら側』のモノはコモディティになる」と書いている。また,「あちら側」で今までメディアに文章を書いてこなかった「不特定多数無限大の大衆」が一斉に情報を発信するようになり,「既存メディアの権威は揺らいで行く」と言う。 最初にこの本の内容について知ったのは数週間前,製造業に勤めている大学時代の友人と久しぶりに飲んだときのことだった。友人は,「ものづくり」と「メディア」という両方の立場で働く筆者がこの本にどう反応するか興味を持ち,感想を聞いてきた。その後筆者は実際に同書を読み,日ごろ懇意にしている取材先やコンサルタ