アートとは何か、アートは社会とどう関われるか。気鋭のキュレーターがアートの役割を根源から問いなおす、コラム連載第1回。 極限状況下の「アート」とは何か アートって何——? 美術館でキュレーターとして働くかたわら、私はある大学でここ数年、アートと社会を繋ぐ現場について―ーいわゆるアートマネージメントの授業を担当している。 教室に座っている多くは、印象派の展覧会に行ったことはあっても、自分たちの時代の作品についてはほとんど知るところのない学生たちである。「アートって何?」という何年かけても伝えきれないだろう問いに、乱暴と知りつつ前提として触れるために、ここのところ毎年、冒頭に話すことにしているのが、東日本大震災の直後に、アーティストやアートを支える人たちが、何を考え何を行ったかについてである。 当時を振り返って、私にとって最も印象的な出来事の一つは、震災から一週間後に出かけた、毛利悠子という若