『朝鮮民衆の社会史 現代韓国の源流を探る』 趙景達(チョキョンダル)著 岩波新書 1232円 『消費者と日本経済の歴史』 満薗勇(みつぞのいさむ)著 中公新書 968円 偉人英雄だけではない、いや名も無き普通の人びとこそが歴史の主人公だ、そう気づかせてくれる2冊を紹介したい。朝鮮近代史の大家による(1)は、19世紀を中心に、村人の信仰や祭礼、婚姻や労働からみた女性の生き方、奴婢(ぬひ)や芸能民、行商人、義賊など周縁的人々の世界を豊かに描き出し、民衆運動から近代化のありかたを見通す。韓国は儒教社会といわれる半面、民衆世界には巫俗(ふぞく)(シャーマニズム)や仏教などの信仰が根づいており、「恨(ハン)の文化」、豊かな感情表現を生んだ。韓国社会への歴史的理解が深まる一冊。韓流ドラマ好きにもお薦めしたい。 「民衆」という普遍的な概念によって、知られざる多様な人びとを掬(すく)い上げた(1)に対して