2019年、細野晴臣デビュー50周年記念展(『細野観光 1969-2019』)が、六本木ヒルズ展望台で1ヶ月に渡って開催されました。そこでは氏の所有するギターやキーボード、民族楽器や果ては玩具に至るまで、世界中のありとあらゆる音の鳴るものが、さながら万博のように陳列されていました。その中で個人的に印象深かったものが、E-mu Systems社のサンプラー「Emulator Ⅰ」です。フロッピーディスクからサンプルを読み込んで使用するこの電子楽器は、1981年の発売当時、メモリー容量はたったの128KB、サンプリング可能な時間も2秒程という、今から考えれば非常に制限的なものでした。 当時このEmulatorが画期的とされたのは、以前のサンプリング・マシンと比べて安価であり、また持ち運びもしやすいサイズであるなどの、即物的な面が大きかったようです。ライヴにおいても重宝され、YMOの1981年の