text by Shuhei Hosokawa 細川周平 photo ©1977 Toshio Kuwabara 桑原敏郎 ミルフォード・グレイヴズ(1941-2021)の訃報を聞いて、「世界からひとつ音が消えた」という感慨に襲われた。気取った言い方かもしれないが、それだけ強烈な印象を残した音と人だった。人となりとサウンドがこれだけ一体化したアーティストは唯一無二だったと思う。60年代のフリージャズの開拓者の一人として一般には知られるが、最初の10数年を除けば、ジャズ本流にはあまり関わらず、フリー・リズムにもとづく即興を究めた打楽器奏者というほうが全容を捉えているだろう。数度の来日公演の記憶から追悼してみたい。 初めて聴いたのは1981年のデレク・ベイリーと田中泯のトリオ(MMD)、表現手段の違う三者が対等に反応し合って、即興の極みに達したようなパフォーマンスに圧倒された。〈踊る〉と〈叩
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