「山階さんが言及されたのはあくまで地方裁判所レベルの判決です。最高裁で判決が出て、初めて日本全体でのルールが決まっていくのでしょう。当行としては、現行の人事制度および労働時間管理については問題が無いと考えています。でも私は貴店の担当です。皆さんの力になりたいと考えています。山階さんは、そこまでご不満なら、人事部に何をして欲しいのですか」山階のような人物と話をする際のポイントは『裁判で決着をつける』といった対決姿勢を避けることだ。その上で、人事部側からは解決策を提示することはしない。あくまで相手側から要求させるのだ。 山階は田嶋から拒否されるだけだと思っていたのだろう。少し驚いた表情をして考え込んでいるようだった。 「私が望んでいるのは、適正な業務時間です。私一人に業務が集中している現状を解決して欲しいだけです」 「分かりました。人事部内のみならず、支店長とも協議しますが、貴店の外為課への人