一般にはなかなか知ることができない「一時保護所」の実態を、社会企業家である著者が訪問し、取材し、 さらに住み込んで明らかにした。そこまでして知ってほしかった問題とは何なのか? また、なぜ関心を 持ったのか? 序章で、その思いを語っています。 「お前は、私たちの息子ではない」 いまから三〇年以上前の話です。隅田川の川岸に、生まれて間もない男の子がダンボールに入れられていました。たまたま通りかかった人に見つけられ、近くの病院に預けられて、その院長によってケンタ(仮名)という名前がつけられました。 彼は、物心がついたときには乳児院にいました。そして、児童養護施設に移されたあと、市川に住んでいたチバさんという夫婦と養子縁組をすることになりました。四歳の頃です。 幼い頃の記憶はなく、自分はもちろんチバさん夫婦の子どもだと思って育ちました。養親(ようしん)がもう一人の養子をとった時に「明日から一人男の