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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (133)

  • ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』

    人はミスをする。これは当たり前のことだ。 だからミスしないように準備をするし、仮にミスしたとしても、トラブルにならないように防護策を立てておく。人命に関わるような重大なトラブルになるのであれば、対策は何重にもなるだろう。 個人的なミスが、ただ一つの「原因→結果」として重大な事故に直結したなら分かりやすいが、現実としてありえない。ミスを事故に至らしめた連鎖や、それを生み出した背景を無視して、「個人」を糾弾することは公正なのか? 例えば、米国における医療ミスによる死亡者数は、年間40万人以上と推計されている(※1)。イギリスでは年間3万4千人もの患者がヒューマンエラーによって死亡している(※2)。 回避できたにもかかわらず死亡させた原因として、誤診や投薬ミス、手術中の外傷、手術部位の取り違え、輸血ミス、術後合併症など多岐にわたる。数字だけで見るならば、米国の三大死因は、「心疾患」「がん」そして

    ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』
  • この本がスゴい!2022: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    「いつか読もう」はいつまでも読まない。 「あとで読む」は後で読まない。 積読をこじらせ、「積読も読書のうち」と開き直るのも虚しい。人生は有限であり、が読める時間は、残りの人生よりもっと少ない。「いつか」「そのうち」と言ってるうちに人生が暮れる。 だから「いま」読む。 10分でいい、1ページだっていい。できないなら、「そういう出会いだった」というだけだ。「いま」読まないなら、「いつか」「そのうち」もない。 に限らず情報が多すぎるとか、まとまった時間が取れないとか、疲れて集中できないとごまかすのは止めろ。新刊を「新しい」というだけの理由で読むな。積読は悪ではないが、自分への嘘であることを自覚せよ。「いま」読むためにどうしたらいいか考えろ。「」にこだわらず読まずに済む方法(レジュメ、論文、Audible)を探せ。難解&長大なら分割してルーティン化しろ。こちとら遊びで読書してるんだから、仕事

    この本がスゴい!2022: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • この本がスゴい!2021

    「後で読む」は、あとで読まない。 「後で読む」は、あとで読まない。 「試験が終わったら」「今度の連休に」「年末年始は」と言い訳して、結局読まなかった。「定年になったら読書三昧」も嘘になるだろう。そもそも、コロナ禍で増えた一人の時間、読書に充てたか?(反語) だから「いま」読む。 たとえ一頁でも一行でも、目の前の一冊に向き合う。いま元気でも、一週間後には、読めなくなるかもしれないから。 今年は、死を意識した一年でもあった。「やりたいこと」を先延ばしにしてるうちに、感染して望みが断たれる可能性が爆上がりした。 時の経つのは早い。人生が長いほど、一年は短くなる。体感時間は加速する一方、人生の可処分時間は、短くなる。 だから「いま」読む。 積読を自嘲したりマウント取るのもヤメだ。いま読まない理由を並べ立てて開き直る不毛も捨てよう。そして、ずっと取っておいた、とっておきのを、いま読む。 そんなつも

    この本がスゴい!2021
  • この本がスゴい!2020

    今年の一年早くない? トシ取るほど時の流れを早く感じるのは知ってるけど、今年は特に、あっというま感がすごい。恒例のこの記事、もう書くの!? と思ってる。 毎年、「人生は短く、読むは多い」と能書き垂れるが、今年は、「人生は加速的に短く、読むは指数的に多い」と変えておこう。 そして、昨年と比べると、世界はずいぶん変わってしまった。 基的に外に出ない、人と会わないが普通になり、マスク装備が日常になった。オフ会や読書会でお薦めしあった日々は過去になり、代わりにZoomやチャットでの交流が増えた。 ポジティブに考えると、そのおかげで、読み幅がさらに広がった。わたし一人のアンテナでは、絶対に探せない、でも素晴らしい小説やノンフィクションに出会うことができた。お薦めしていただいた方、つぶやいた方には、感謝しかない。 さらに、今年はを出した。 ブログのタイトルと同じく、[わたしが知らないスゴは、

    この本がスゴい!2020
  • おかしな議論にごまかされないための『論証のルールブック』

    『論証のルールブック』は、簡潔で説得力のある文章を書くためのルールが、50にまとめられている。1つのルールに1つの例文、1つの解説という構成で、このそのものが簡潔さを目指している。 ごく基的な常識レベルのものから、見落としがちな盲点まで、まんべんなく網羅されているのがいい。いくつか紹介する。 主張には根拠が必要だ 数字は他のエビデンスと同じような検証が必要だ 長文の論証や、口頭で伝える際、サインポストを活用する 論点先取の見抜き方 「主張には根拠が必要だ」なんて、当たり前すぎて、なにを今さらと感じるかもしれない。確かにその通りだろう。だが、実際に、事実のフリをした意見や、根拠レスの主張に出会ったとき、即座に見抜けるだろうか。 たとえば、この主張なんてどうだろう。 聖書に神は存在すると書かれているから、神は存在する 聖書は神が書かれたのだから、正しい これは、結論が前提に含まれた有名な例

    おかしな議論にごまかされないための『論証のルールブック』
  • 「いま・ここ」から離れる『世界文学アンソロジー』

    日ごろ「自分」を機械的にやっていると、外面の「自分」が当たり前になる。仕事上の立場だとか、SNSで被っているキャラといった、日常的に使い分けている「自分」が、内面のわたしを乗っ取りはじめる。 そんな「自分」を異化するため、他人の物語を聞く。しかも、できるだけ「いま・ここ」の自分から離れたものがいい。異なる言葉、違う文化の物語を聞くことで、自分にとっての当たり前が、当たり前でないことを思い知る。 『世界文学アンソロジー』を手にすると、このアタリマエじゃ無い感が浮彫りにされてくる。 固まった「自分」に一撃を加える たとえば、フランツ・カフカの「夏の暑い日のこと」がそう。 わずか2頁の掌編なのに、常識が丸ごと壊される感覚を味わえる。何も悪いことをした覚えがないのに、突然逮捕される『訴訟(審判)』を思い出させる。あるいは、自分の身の上に、何か重要な間違いが起きつつあるのに、それに関わらせてもらえな

    「いま・ここ」から離れる『世界文学アンソロジー』
  • ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』

    たとえば天下りマネージャーがやってきて、今度のプロジェクトでバグを撲滅すると言い出す。 そのため、バグを出したプログラマやベンダーはペナルティを課すと宣言する。そして、バグ管理簿を毎週チェックし始める。 すると、期待通りバグは出てこなくなる。代わりに「インシデント管理簿」が作成され、そこで不具合の解析や改修調整をするようになる。「バグ管理簿」に記載されるのは、ドキュメントの誤字脱字など無害なものになる。天下りの馬鹿マネージャーに出て行ってもらうまで。 天下りマネージャーが馬鹿なのは、なぜバグを管理するかを理解していないからだ。 なぜバグを管理するかというと、テストが想定通り進んでいて、品質を担保されているか測るためだ。沢山テストされてるならバグは出やすいし、熟知しているプログラマならバグは出にくい(反対に、テスト項目は消化しているのに、バグが出ないと、テストの品質を疑ってみる)。バグの出具

    ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』
  • 秘密の悩みは、バーチャル師匠に相談せよ

    精神的にヤバいとき、どうするか? 自分ではどうしようもできず、かつ、誰にも相談できない悩みだったら、どうするか? そんなとき、バーチャル師匠を召喚する。いわば仮想的な師匠である。 バーチャル師匠とは あらかじめ「人生の師」を決めておき、困ったときに相談する。師から直接、教えを受けてなくてもいいし、生きている必要すらない。師を模範として慕い、学んでいればいい。それこそ、マスター・ヨーダを師としてもいい。私淑と呼ばれる方法で、『アイデア大全』(読書猿、フォレスト出版)から学んだ。 700年前の詩人ペトラルカも、私淑を実践した一人だ。 彼は詩人としての名声を博してはいたものの、うつ病に悩まされ、精神的危機に陥っていた。自己欺瞞による惨めさと、絶対に叶うことのない恋と、欲情が生み出したドロドロの愛憎関係に悩まされていた。 誰にも言えない悩みだから、脳内で相談する。彼にとっての、バーチャル師匠はアウ

    秘密の悩みは、バーチャル師匠に相談せよ
  • 高度に発達した科学は音楽と見分けがつかない『零號琴』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    一気に読んだ。最初は座っていたのだが、そのうち立ち上がり、ぐるぐるして、最後は叫びっぱなしだった。 何を見ても何かを思い出す これは、エヴァとゴレンジャーとプリキュアのパロディであり、ナウシカとシンゴジとシンフォギアのリスペクトであり、どれみとどろろとまどマギの同人であり、火の鳥と寄生獣と日沈没のオマージュである。ただし、どれも知らなくても無問題だ(後で説明する)。 これ、好きな人ならいくらでも幻視できる怪物で、どこを読んでも、何を切り取っても、どこかで観た・読んだ過去の作品とつながり、思い出し、いま目の前で進行する美麗で壮大で禍々しくもバカバカしい物語にオーバーラップする。 拡張現実から拡張虚構へ どっぷり漬かりながら、ふと気づく。これ、小説でARを実現した人類最初の作品ではないかと。AR、つまり拡張現実(Augmented Reality)をテーマにしたというのではなく、この怪作を読

    高度に発達した科学は音楽と見分けがつかない『零號琴』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • この本がスゴい!2018: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    まとめ すごく長くなったので、まとめる。まず、今年のベスト。 このがスゴい!2018のラインナップ。 このがスゴい!2018の一覧は以下の通り。 ◆フィクション 『ランドスケープと夏の定理』高島雄哉(東京創元社) 『舞踏会へ向かう三人の農夫』リチャード・パワーズ(河出書房新社) 『寿司 虚空編』小林銅蟲(三才ブックス) 『直線』ディック・フランシス(ハヤカワ文庫) 『ブッチャーズ・クロッシング』ジョン・ウィリアムズ(作品社) 『槿』古井由吉(講談社文芸文庫) 『平家物語』古川日出男(河出書房新社) ◆ノンフィクション 『知の果てへの旅』マーカス デュ・ソートイ(新潮クレスト・ブックス) 『愛とか正義とか』平尾昌宏(萌書房) 『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』吉川浩満(河出書房新社) 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむだ(ダイヤモンド社) 『文学

    この本がスゴい!2018: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 物語を書く「前に」知るべきこと『工学的ストーリー創作入門』

    もちろん葬った原稿が沢山ある。 うぬぼれ&創作欲に突き動かされ、勢いだけで書き始め、そのうち行き詰まる。なんとなく良くないのは分かるが、それが人物なのか構成なのかシーンなのか分からない。描写を直すと人物が色褪せ、シーンを変えると構成が崩れる。結果、原稿を書くたびに一からやり直すハメになる。最後まで書き上げられるかは運まかせで、最後まで行けた試しがない。 問題は書く「前に」ある これは、やり方が間違っている。何年かけても完成しない。『工学的ストーリー創作入門』を読まなくても知っていたが、書でとことん思い知らされる。わたしの努力は無駄ではないかもしれないが、非常に効率が悪い。問題は、書くことそのものよりも、その「前に」存在している。 『工学的ストーリー創作入門』(Story Engineering)は、物語を書き始める「前に」知るべきことを整理するだけで、ストーリーは工学的に作り上げることが

    物語を書く「前に」知るべきこと『工学的ストーリー創作入門』
  • 料理は「火入れ」で上達する『から揚げは「余熱で火を通す」が正解!』

    一人暮らしの自炊から始めて、所帯を持ち、家庭料理もやるようになって20年。やネットを参考に、自己流で試行錯誤をしてきた。クックパッドは有料会員でないと無意味なことも分かっているし、[白ごはん.com]だと、レシピと技が一緒に身につくことも知っている。 自己流で得た極意は、「料理は下ごしらえが全て」だ。道具や調味料にこだわりを求めるのもいい。だが、美味しさを引き出すのは、捌いたり切ったり下味をつける「下ごしらえ」にあることに気づいた。おかげでずいぶん上達し、今では「いかにあり合わせで美味しいものを作るか」とか「洗い物を最低限かつ料理が終わった時点で最小限」といったテーマを追求している。 それでも課題はある。レシピ通りに作ったのに、イマイチなのはなぜか? たとえば「から揚げ」。一口大に切った鶏肉に衣をつけて揚げる。切りかたや衣の配合を色々と研究したが、すごく美味しくなるわけではない。 あると

    料理は「火入れ」で上達する『から揚げは「余熱で火を通す」が正解!』
  • おっさんから若者に贈る「経験を買う」6冊: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    結論から言うと、経験は買える。 適切なタイミングで適切なと出会うことで、しなくてもいい経験や、身につけておくべき知恵を”買う”ことができる。今「おっさん」である私から、20年前の「若者」だった私に、いい仕事をする上で読んで欲しいを選んだ。 20年前は、炎上プロジェクトに飛び降りて、鎮火しつつ撤退する「しんがり」役を仰せつかっていた。負けることは決まっているが、死なないように生きることばかり考えていた。将来に漠然とした不安を感じていたものの、とにかく目の前の障壁をクリアすることが先決だと思っていた。 今はかなり違う。 身をもって得た経験や教訓はあるが、代償は大きく、もっと効率よく結果につなげることができたはず。この「効率」とは要するに時間だ。莫大な時を費やして手に入れた経験は確かに得難いが、そんなことをしなくても積むことはできた。どうすれば可能か、今なら分かる。 それはを読むことだ。

    おっさんから若者に贈る「経験を買う」6冊: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
    zaki1010
    zaki1010 2018/08/02
    「壁」と「大全シリーズ」(問題解決大全とアイデア大全)は本当にすごい本だった。
  • 【スプラトゥーン2】 わが子をS帯に入れるために親がしたこと

    結論から言う、「親が楽しそうに遊ぶ」である。 父を越えてS帯に! 娘スゴい!  #Splatoon2 #スプラトゥーン2 #NintendoSwitch pic.twitter.com/iwZQhfhlQ8 — スゴの中の人 (@Dain_sugohon) 2018年6月13日 基的に「たくさん塗ったほうが勝ち」なので、水鉄砲でペンキ遊びしているようなノリでプレイする。そんな親の後ろ姿を見ていて、「わたしもやりたい!」と言い出したのでコントローラーを握らせる。 スプラどころか、FPSすら初である。いきなりネットワーク対戦は酷なので、一人でできるゲーム(ヒーローモード)をやらせる。「ホタルちゃんカワイイ!」とか「このタコ~~」と大騒ぎしながら、クリアする。負けるとカンシャクを起こし、イライラを周囲に撒き散らす人がいるが、何の意味も無い、何の意味も無い。これ、口で言っても聞くわけがないので

    【スプラトゥーン2】 わが子をS帯に入れるために親がしたこと
    zaki1010
    zaki1010 2018/06/14
    『大切なのは、試行錯誤を楽しむこと。』これが出来たい。心に余裕がないと出来ないのか、余裕がなくでも出来る術があるのか。いつでも出来たい。
  • なぜ「面白い物語」は面白いか?『物語論 基礎と応用』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    なぜ「面白い物語」は面白いか? トートロジーみたいだが、小説を読んでて、そんな疑問を抱いたことはないだろうか。ひたすら浸っているときは気付かないが、読了後、どうしてあんなに夢中になっていたのか不思議に思ったことはないだろうか。 わたしはある。一般に面白い小説に共通する特徴を洗い出したり、特定の人が面白がる「面白がりかた」を考えることで、おぼろげながら、「面白い物語の法則」のようなものを見出していた。あるいは、脚術やストーリーメイキング、『マンガの創り方』といったネーム作りのハウツーから、創作のための実践的なノウハウをもらっていた。 だが、たいていはヒューリスティックで「売れた作品を分析するとこうなっている」という経験則が最初にあり、その理屈は後からとって付けたように書かれている。そうではなく、「人はなぜ物語を好むのか?」というそもそも論から始めたい。もちろんアリストテレス『詩学』のよう

    なぜ「面白い物語」は面白いか?『物語論 基礎と応用』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 世界は不公平である『My Room 天井から覗く世界のリアル』

    世界は不公平である。金持ちと貧乏人がいて、美形とそうでない人がいて、幸せな人と不幸せな人がいる。そんなことは分かっている。そんなことは分かっているが、これほど如実に見せつける視点が新しい。 55ヵ国1200人のベッドルームを、天井から並べた景色は、今の世界のサンプルそのもの。民族や文化だけでなく、その部屋の主の生い立ちやライフスタイル、思想までをも垣間見ることができる。 どの部屋にも共通するのは2つ。ひとつは、天井を見上げている笑顔、もう一つは、自分の宝物を広げているところ。天井を見つめるのは、18歳から30歳の男女で、その若者がいまいる状況、何を望んでおり、どうしたいかといった身の上話を語ってくれる。 たとえば、アメリカ合衆国ダラスの「銃のコレクションがある部屋」。ベッドの上には、拳銃やショットガン、アサルトライフル、防弾チョッキ(?)が並んでいる。銃社会アメリカを象徴するかのような部屋

    世界は不公平である『My Room 天井から覗く世界のリアル』
  • どうやって本を探すか? ひとつの回答「現代思想の316冊」

    「どうやってを探している?」とよく聞かれる。 もちろん、書店や図書館で出会ったり、ネットやクチコミを求めることはやっている。問題なのはそこからで、そうした自分のアンテナの届きにくいところにあって、なおかつ私好みの/私が読むべき一冊は、どのように圏内にするか? ひとつの回答がこれ。 『現代思想』の4月号で、「現代思想の316冊」として、哲学から社会学、経済学、人類学、医療・福祉、宗教、美学、数学教育学、エスノグラフィ、メディア論など、様々な思想から重要書を選び出たブックガイド。その分野に興味を抱く大学新入生向けという触れ込みだが、手軽な文庫新書から、ゴツいやつまで取り揃えている。 もちろんこれを「ブックガイド」として読むのもありだ。興味のあるキーワードから読みたくなったを手にしてみればいい。あるいは、未読だが気になっていたや、既読のがどのように紹介されているかを確かめながら、再読す

    どうやって本を探すか? ひとつの回答「現代思想の316冊」
    zaki1010
    zaki1010 2018/04/11
    これ、音楽の探しかたとも共通してるなあ。
  • 「やりたいこと」を要件定義にする3冊

    システム開発でモメることは多々あるが、その質は「やりたいこと」が分かっていないに尽きる。 「やりたいこと」が分かっている場合、リソースが足りないとか突発的な事象が起きたといったトラブルがあっても、まだ何すればいいかは分かる(できるできないは別として)。 しかし、「やりたいこと」分かっていない場合、リソースからスコープのあらゆる場面において、何をしていいか分からないことになる。恐ろしいことに、トラブルになって初めて「やりたいこと」が分かっていないことが見えるようになる。if文を書くときにelseで何するか決まってなかったり、リリース段階になっても運用方式が決まってなかったり。 分かっていないとどうなるか? それぞれのタスクを受け持つ人は、自分のタスクを完遂するため、「一つ前の」仕事をするハメになる。つまり、自分のタスクへのインプットとなる成果物を作ることになる。稟議書を書くシステムエンジニ

    「やりたいこと」を要件定義にする3冊
  • 『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はスゴ本

    ウィトゲンシュタインののなかで、これが最も分かりやすい&面白い(当社比)。 数学という存在を、人の知性の産物である「発明」と捉える人がいる。いっぽうで、人が見出した世界の質である「発見」と見なす人がいる。この議論は、[『神は数学者か』はスゴ]にて語ったが、いずれの場合にせよ、数学の限界が(仮に)あるとしたならば、それは人の理性の限界であることは了解していただけるだろう。なぜなら、「発明」であれ「発見」であれ、主語が人である限り、その限界も人に属するからである。 ウィトゲンシュタインの講義は、数学の限界を見極める一方で、数学の底(もともとの了解事項)を明らかにしてくれる。 数学の底? そんなのユークリッド幾何学やヒルベルトの基礎付けを見るまでもなく、「定義」と「形式」でしょうに(あるいはそこから定義づけられる公理系といってもいい)。書を手にするまでは、そう考えていた。だが、「発明」で

    『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はスゴ本
  • 『愛とか正義とか』はスゴ本

    当たり前だと思っていたことが、あたりまえでないことに気付き、根から世界が刷新される。もちろん刷新されたのは世界ではなく、わたしだ。OSレベルで無意識のうちにしてきた「考える」を、あらためて知る。読前読後で世界を(わたしを)変えるスゴなり。 書は、哲学・倫理学の入門書になるのだが、そこらの「哲学入門」ではない。「自分で考える」ことを目的とした入門書という意味で、まったく新しい。 なぜなら、そこらの「哲学入門」は、哲学していないから。むしろ反対に、「哲学しないこと」を目指している。つまりこうだ、イラストや図解や簡単なセリフにまとめた哲学者や論を紹介しているだけにすぎぬ。哲学とは、「自分で考える」ことなのに、それを捨て去って、「これが哲学ですよ」という「答え」を提示しているのだ。 もちろん、「自分で考える」よすがとして過去の哲学者をとりあげ、たとえば現代的な問いに対し斬り込み方や論の立て方

    『愛とか正義とか』はスゴ本