朝鮮戦争が西欧諸国に与えた衝撃は翌1951年後半頃にはすっかり醒めてしまいます。極東の戦争がヨーロッパには飛び火してこないとほぼ確信されたからですが、ドイツ国内の再軍備気運も同時に落ち着いてしまいます。こうした隙を突くようにして提示されたのがソ連からのドイツ中立化提案でした。 西ドイツの再軍備はNATOの傘下に入る前提がある限り西欧諸国にとっては非常に有望な計画でしたが、東側、すなわちソ連にとっては今まで通常兵力で話にならない程に弱体だったNATO軍に西ドイツ軍が加わることは無視できない問題でした。核戦力での劣勢を通常戦力での優勢で補っていたソ連にとって新しい西ドイツ軍の誕生は絶対値として12個師団以上の地上兵力増強と新たな海空軍部隊の出現を意味していますから冷戦の行く末を変える一大事です。 そこで病床にあった晩年のスターリンは最後の取引を持ち掛けます。その切り札は「ドイツの再統一」でした