前回までのあらすじ(自分探しとJ-POP) kenzee、速水健朗さんの「自分探しがとまらない」を読んで感心する。速水さんの論考は「自分探し」と呼ばれるバブル崩壊以降の若者に特徴的なモラトリアムマインドを社会的な事件やブームから解き明かしたものだ。だが、そこには主に90年代のJ-POPが描いた「自分探し」については触れられていなかった。そこでkenzeeやってみた。そうするとバブル崩壊後の91年あたりから槇原敬之、ミスチル、コムロ系などといったヒットメーカーの歌詞に共通してみられる上昇志向、自己肯定の世界観が浮かび上がってきた。要は、「人生とは迷ったり探したりして見つけ出していくもの」または「人生とは自分との戦い」といった「自己が誇大した思考」に基づいている、と。これはバブル崩壊による経済の信用の失墜とパラレルな関係にある。「経済」という価値観がアテにならない以上、自分の手で物語を発見しな