芥川文の物語[編集] さようでございます。夫の死骸を見つけたのは、私に違いございません。明け方、あの人の部屋をのぞいてみましたら、布団の中でぐったりしていたのでございます。枕元に聖書がおいてあったので、はッと思って、葛巻さんに知らせに行ったのですけれど、もうだめでした。 あの人が遺書を書いて持っているというのは知っていました。でもまさか、私を遺して本当に逝ってしまうと思いませんでした。本当に――あの人は、思いつめていたんですね。あの人は、私の前ではとても優しかったのです。結婚する前からそうでした。「文ちゃんは、自然のままの優しい心持でいらっしゃい。■■■■■のように、小さく利口になってはいけません。あれではいくら利口でもいけません。馬鹿です。本当の生まれたままのところがありません。今のままでいらっしゃい。今の文ちゃんは、■■■■■を千人合わしたのよりもっと立派です。」あの人はこう私にいって