本を書きたいなら、机の前から離れてみる さて、小説を書くか、エッセイを書こうかと意を決したとき、あなたならどうしますか? ここから一歩も動くまいとかまえて、パソコンの画面や原稿用紙を睨み、どっかと腰を据える──そんなイメージはありませんか? 駆け出しの作家というと、苦行僧さながら、無我なのかウツロなのかわからない顔をして指を動かしてみては、ときおり天井を仰いで嘆息し、それを3、4回繰り返したあげく、きょうはどうも調子が出ないな……と苦笑いするか、おれなんかダメだ作家になんかなれるわけない……と肩を落とす、というステレオタイプのイメージがありますよね。さらにいえば、そのうち夕暮れが迫り、切なさもちょっとつのってくると、酒をちびりちびりやりはじめて……というような。どうも現代日本で「文学」というと、太宰治病から逃れられず、自己憐憫もまた“小説家のひとつの仕事”と捉えられている気配が、いまだに一