現実として受け容れ難いほどの大惨事は、誰の身にも起こりうる。東日本大震災、阪神淡路大震災、JR福知山線脱線事故――。しかし、突然の喪失にどう向き合えばよいのか、どうすれば悲嘆の渦中にいる人たちに寄り添うことができるのか?多くの人はあらかじめ、答えを持たない。 その時の道標として読んでおきたい本に出会ったので、紹介したい。1992年に単行本として出版され、このたび文庫化された。 1985年に起きた、日航ジャンボ機墜落事故。折しも夏休み、家族連れやビジネスマンで満席だった旅客機は羽田を発って間もなく操縦不能に陥り、群馬県上野村の御巣鷹山に墜落。520人の命が喪われた。 本書はその日航機事故を中心に、日本の修学旅行生らが犠牲になった上海列車事故(1988年)や信楽高原鉄道事故(1991年)など、大事故で亡くなった人たちの遺族がどのような状況におかれ、何を感じ、どう行動したかを追った「喪の軌跡」で